わからない
坂本達と合流してから暫く経った。今夜は勝利と、生き残った事に対しての宴が行われていた。
「銀ちゃん!今日はありがとね、助かったよ。流石“白夜叉”!!」
智恵はバシッと銀時の背中を叩いた。酒を飲んでいた銀時はブーっと吹く。
「おまっ力加減んんんん!!」
「今夜は私が酌してあげるよ!ほら、飲め飲め」
二人は気が合うのか、人一倍仲良くなっていた。
一方李野は高杉と坂本に挟まれ、二人に酌をされていた。
「今宵は宴じゃき李野も飲め飲め」
「……拙者はそんなに飲まないのだが…」
「まさかおれの注いだ酒が飲めねェ訳ねェよな…?」
「………」
「おい!俺も仲間に入れろ!!寂しいじゃないか!!」
すると、酔った智恵がいきなり立ち上がったと思うと、ずんずんと李野に近寄り仁王立ちした。
「ちょっとあんた!!」
「……?」
「この間はよくも無視してくれたわね!!」
さらに智恵は真っ赤な顔で続ける。
「人ってのは初対面が肝心なの!あの態度じゃあんたの第一印象はまさにくうるびゅうてぃそのものじゃない!!」
「それお前誉めてんぞ」
「だからほら!握手!」
「………」
李野は無言で高杉の手を握らせた。唖然とする智恵を余所に立ち上がるとその場を去ろうとした。が、智恵がそれをさせない。
「なにすかしてるかしらないけどいい加減にしてよ!!その態度が気に入らないの!!」
「!」
あなたのその態度が気に入らないのよ!!
「おい!」
「!…あ…ごめん…」
「…智恵、お前酔いすぎだ。少し風に当たってこい。俺も行くから」
銀時に付き添われ李野を気にしつつも気まずそうに部屋から出て行った。
「………母上にも、言われたな…」
そう呟いた李野を高杉が引っ張りまた同じ位置に座らせた。
「李野……智恵が嫌いなのか?」
桂がそう尋ねると李野は小さく首を振った。
「……どう接すればいいかわからない。…だけどもう…嫌われてしまった…」
表情は乏しいが、ほんの少し眉を下げ言った李野の頭を高杉がわしわしと撫でた。
「あいつは単純でお人よしじゃき大丈夫じゃ。アッハッハッハ!」
「………坂本と言ったな」
「辰馬でええ」
「……ありがとう」
これまたほんの少し微笑んだ李野に目を丸くした坂本。
「……やば、鼻血出そう…」
「レアだ…」
「おい李野こっち向け」
「……主らは拙者を何だと…」
「――……あいつはな、親に愛されなかったんだ」
「え…?」
「髪と目の色が自分らとは違うから気味悪ィってな」
「…そんな……綺麗な髪してるのに…」
「ハハ、そいつは李野に言ってやれ。だからあいつはお前に対して接し方がわかんねェんだよ」
「……やっぱり、大切なんだね…」
「…銀さん妹思いだからな」
星空を見上げ少し頬を緩めながら言った銀時。そんな横顔を見て、頬を赤く染める智恵だった。
「――あの!さっきはごめんね!!私酔っ払っちゃってたみたいで…その…」
「………」
必死に謝る智恵に李野は怖ず怖ずと手を差し出した。
「…へ?」
「…あ、あくしゅ……」
照れた様に顔を逸らし頬をかく李野。回りの志士達は鼻血を吹いた。
「………」
「…やはり無理、」
李野の言葉を遮り、ガバッと抱き着いた。
「やばっちょっかわいっ!!今日から私達親友ね!!いつ何時も一緒にいようね!!私ちょっと着せたい服が…」
「下心見え見えなんですけど」
智恵は李野を抱いたまま、振り回し始めた。目が回っても、嬉しそうにしていた李野だった。
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