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吐く溜息は白かった



「……何人ん家でイチャコラしてる訳?」
「ちっ違う!!これはっ」
「何じゃあ?銀時。嫉妬か?」


李野は慌てて坂本を押し退け、上半身を起こし弁解するも坂本に阻まれた。

坂本は普段のお気楽な笑みではなく、挑戦的な笑みを浮かべている。


「は?何言ってんの馬鹿馬鹿しい」
「だから違うと言って!」
「李野さァ、別に俺に弁解しなくてもよくね?俺関係ねェじゃん」
「っ!」


思わず下唇を噛んで俯く。


「とにかく人ん家でやめてくんない?そういう事は余所でやれ」
「………」
「悪いのォ。じゃ、お言葉に甘えて」
「わっ、ちょっ」


坂本は李野の手を掴むと引きずる様に外へと連れ出す。

その時すれ違った銀時と目が合ったが、李野は堪らず反らした。















「――離せ辰馬!!」


階段を降りた所で、李野は手を振り払った。


「あっはっはっは!怒られちったのォ」
「………どういうつもりだ…」
「何がか?」
「っ銀時がいる事知っていたのだろう!?」
「ああ知っとった」
「じゃあ何故!」


息を荒げる李野に対し、坂本は背を向けた。


「……おまんは銀時ばっかじゃ…」
「は…」
「…わしんら……わしと晋助は報われんのォ」


坂本は夜空を見上げる。


「……今宵の星ば綺麗に輝いちょる…。あっはっはっは!」


笑いながら坂本はそのまま去って行った。


「………っ」


李野は暫くその後ろ姿を見つめた後、壁にもたれた。ハァ、と吐く息がほんのり白い。いつの間にかもう冬だ。


「………何故…こうも上手くいかんのか…」


「―――当たり前だろう?それが人生ってもんだ」


独り言に返事がきたのに少し驚き、横を見るとお登勢が紫煙を吐き出していた。


「…お登勢殿……すまない。騒がしくしてしまった…」
「………一杯寄ってきな。こんな年寄りでも、愚痴くらいは聞いてやれるさ」


今は素直に甘える事にした。




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