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能天気にも救われる


「………何故江戸にいる」
「勿論、あなたを連れ戻しに来たんですよ。李野“お嬢様”」


背後の人物はニヤリと笑った。

銀時と桂も新たな人物に気づき警戒を強める。

網笠を深く被ったその人物の異形な風貌を見て桂は軽く目を見開いた。


「天人…!?」


そんな桂を余所に、李野は振り向かないままその天人と話す。


「…近い内に戻るつもりだ」
「あなたも呑気ですね。こんな所でかつてのお仲間さんと酒宴ですか?」
「口を慎め。私を誰だと思っている」
「勘違いしないで頂きたい。水野家の全権を握っているのは“あの方”です。あなたにはよもや何も権限は無いに等しい」
「……どういう事だ…」


見えない話に眉を潜める。それ以上に銀時達はさっぱりだが。

李野が“私”と言ったのも初めて聞いた事だった。


「…だが、あなたは“あの方”に大変気に入られている。否、あなたのその珍しい容姿にかもしれませんが」
「……主にはそれが気に入らないのだろう?」
「ご名答。では消えて貰います」


そう言った途端、天人が斬りかかってきた。銀時達は慌てるも天人の方が速い。

李野は振り返る。腰の獲物を抜いた所で間に合いはしない。何を思ったか左腕で顔を庇う様に出した。


「唯一の取り柄の顔が第一ですか。その腕貰ったァア!!」


左腕を斬り付け、そのまま斬り落とそうとした。

だが李野は刀が当たった瞬間、腕を傾け刃を骨の上で滑らせて掌までこさせると、それを掴み相手の懐に入った。


「なっ!?」


そして鳩尾を殴り、相手の剣を掴む力が抜けた瞬間、その刃を天人の首横にぐさりと刺した。

李野は懐に入ったまま銀時達には聞こえない様、天人の耳元で囁く。


「…どうだ…?見下している人間に手も足も出ない気分は……」


その、嘲笑も僅かに含まれた冷ややかな声に背筋が凍った。天人は口からゴボッ、と血を吐き出し息絶えた。

李野が手を離すとバタッと倒れた。


「………」


小さく息を吐き出した李野は、背後にいる銀時達を首だけ振り返って見た。

銀時達はその表情に息を呑む。

それはかつて戦場で見せていた、感情が欠落しきった顔だった。



掛ける声が見つからないのだろう。と思った李野は再び正面を向いて寂しげに微笑む。


だが、能天気はこういう時でも能天気だった。




「李野!!おまん腕がおとろしい事なっとるがよ!骨が見えちょっとが!あっはっはっは!」


どれ、と立ち上がった坂本は李野に歩み寄るとそのまま抱き上げ、横抱きにした。


「!ちょ、たつ」
「金時、おんしの家借りるきに。包帯ばたくさんあるろ?」
「は?いや、あるけど…まず病院だろ、普通…」
「それもそうか!」


わしが連れて行きゆうからの〜と坂本は呑気な口ぶりに反して超ダッシュで病院を目指した。




「た、辰馬…このくらい自分で歩けるのだが…」
「おまんは止血しちょけ」
「この体制で出来るわけ」
「しちょけ」
「……はい…」



あれ?何か怒ってる?



――――――
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あきゅろす。
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