切なる願い
何やかんやあって桂はあの場を二人に任せ先を急ぐ。
すると、壁に寄り掛かる李野がいた。
「李野!?」
桂が急ぎ駆け寄ると、李野は息も荒く、見るからに様子がおかしい。
「……少し…っ…肩を、貸してほしい…」
「…だが」
「拙者達が…止めないと…!!」
「………」
桂は身を切る思いで李野を支えながら進んで行った。
ジャキン…
李野と桂は浪士を斬ると剣を納めた。
そして前を見る。
「――ヅラ、李野。あれ見ろ。銀時が来てる」
高杉の視線の先には銀時と片手が紅桜の似蔵が激しく戦っていた。
「紅桜相手にやろうってつもりらしいよ……ククッ…相変わらず馬鹿だな、生身で戦艦とやり合う様なもんだぜ」
「………もはや人の動きではないな…。あの男……死ぬぞ。貴様は知っていた筈だ。紅桜を使えばどのような事になるか……仲間だろ、何とも思わんのか」
「ありゃああいつが自ら望んでやった事だ…あれで死んだとしても本望だろう」
「……ハァ…ハァ…」
李野は額を押さえ、見上げる。
「(………銀時…)」
「刀は斬る、刀匠は打つ、侍は……何だろうな…」
高杉は刀をかざし、話す。
「ま何にせよ、一つの目的の為に存在するものは、強く品やかで美しいんだそうだ………こいつの様に…」
高杉は刀をしまい、喉の奥で笑う。
「俺も目の前の一本の道しか見えちゃいねェ……畦道に仲間が転がろが誰が転がろうが構いやしねェ…」
李野は一歩前へ出る。
「…晋助…お主には“道”の先に見えているものはあるのか…?」
高杉は顔だけ振り返り、李野の目をじっと見る。
「………お前さんは一番俺に近いと思っていたがな」
「………そうだな。…だが主らのおかげで変われた……皆がいたから…」
「李野…」
桂は呟いた。
「…だから――」
ズガァン!
その時、銀時達が戦っていた屋根が落ち、紅桜に絡め捕られているのが見えた。
「銀時っ…」
李野がそう言うと、高杉は鼻で笑い再び前を向いた。
「奴が心配なら行きゃあいい。お前ェは銀時しか見えちゃいねェもんなァ?」
嘲笑う様に笑った高杉に、李野の青筋が浮かんだ。
つかつかと高杉に歩み寄ると胸倉を掴む。
そして、
ゴツンッ
頭突きをした。それに桂はあんぐりとする。
高杉も結構な衝撃に頭が揺れ、少し後ろにのけ反るが李野に胸倉を引き寄せられた。
「銀時しか見えていない!?よく言えたもんだな!!拙者達が何故ここにいるのかわからんのか!!」
こんなにも、大切に思っているのに。
「………」
「何故…わかってくれない…!!…少しは周りの事も、考えたらどうだ…」
そこまで言って、李野は片手で口を覆った。何かがせりあがってくる。
「うっ…ゲホッゴホゴホッ」
「李野!!」
高杉から手を離し、その場でうずくまってしきりに咳をする。桂は急いで駆け寄った。
高杉はただ感情の篭っていない目で見下ろすだけ。
李野は少し手を離し見ると、血がついていた。どうやら本格的に傷が開き始めたらしい。
桂は李野を気にかけながらも高杉を見上げ、言葉を紡ぐ。
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