呆然と唖然のややこしいったらありゃしない
「李野さん帰って来ませんね〜」
「心配アル。きっと腹空かして路頭に迷ってるネ」
さっきからガキ共がこんな調子だ。だが俺はジャンプを読んでソファーにゴロゴロ。
だって俺が気にする事ないし。あいつが勝手に出て行っただけであって、銀さんは悪くないもーん。
なのにこいつらときたら李野の味方ばっかり。俺はいつも一人だ。そんなんじゃ僕泣いちゃう。
そりゃわかってるよ?あいつが正しい事言ってるのくらい。
だけどさァ、あんな母ちゃんみたくガミガミくどくど言われるとやる気無くす訳。ね?わかるでしょ?
それに俺は社長なの。家主なの(ほんとはババァのだけど)。何しようがするまいが俺の勝手なのサ、ハハハハ……ハァ。
昔から李野はああだった。多分、俺らん中じゃ一番俺が言い合ってる。
「銀ちゃーん」
「まだ夕方じゃねェか」
「いつもだったら一時間か二時間で帰ってくるのに」
「だったらてめェらで行けよ。俺はジャンプで忙しいの」
白い目を向けてくる二人を無視し、尚もジャンプを読み更ける。
すると、黒電話が鳴った。何か久々に聞いた気がする。
動くのも億劫な俺は出ない。
「新八ィ、電話」
「………僕、銀さん以上にダメな人間、いないと思う」
「長谷川さんがいるだろォが」
「マダオは求人雑誌、銀ちゃんはジャンプネ」
新八は大きなため息をついて、電話に出た。地味の癖して偉そうに。
「はいもしもし万事屋ですけど」
怠そうに出んなよ。お客様だったらどーすんだコノヤロー。
「桂さん?え、どうした………え!!?ちょっどういう…って桂さん!!詳しくっ」
何やらただ事じゃない新八の形相。俺はやっとジャンプから顔を上げた。
「どーした新八」
「ヅラが捕まったアルか?」
「……李野さんが……」
「「李野?」」
新八は震える口から紡ぎ出した。
「…李野さんが…子供を助ける為に…火事の家に飛び込んで………死にそうで…来てくれ…って……今手術室にいる……って……」
は?
「……待て待て…李野がなんだって?」
「っだから!!李野さんが死ぬかもしれないって桂さんが!!!」
あいつが…死ぬ…?
「………」
「銀さん!!」
「…今日エイプリルフールじゃないんだけど…?」
「とにかく行くアル!!大江戸病院アルか!!?」
「う、うん…」
「大丈夫ネ!!李野がそう易々と死ぬ筈ないヨ!!!」
神楽はそう叫び、呆然とする俺と新八を引きずって、病院へと向かって行った。
こういう時の女って逞しいよなァ。
俺は漠然とそう思っていた。
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