・ 前世で王と弟を引き離してから、私は生まれ変わるたびに、鈴の魂を守ってきた。 いつだって鈴の見た目は美しく生まれてきた。 鈴は、その容姿から男に狙われることが多かった。 女に生まれた時もそうだし、男に生まれたときだってそうだ。 男を惑わすフェロモンでも出ているんだろうか。 そういう巡る合わせなのだろうか。 天音鈴として生まれた今回も、愛らしく美しかった。 王の魂は、そんな鈴に魅かれるように現れる。結ばれているから、だろうか。 いつの時代だって、王は鈴の前に現れるのだ。 今回は7歳の時だった。 鈴はその時出没していた変質者に誘拐された。私も一緒だった。 その時、私と鈴は王に会った。王の生まれ変わりに。 その事件以来、私と鈴は男性恐怖症になってしまったが、その時以来知り合った王の生まれ変わりと、その友人にだけは普通に接することができた。 私たちが引っ越しするとき。 鈴は泣きながら、王とその友人に離れたくないとしぶった。 実は、鈴の初恋の相手というのが、その王の生まれ変わりだったりするのだ。 私は、といえば、その頃から妙に聞き分けの良い子供だったから、何も言わなかったけれど。その時も、王の生まれ変わりに言われたっけ。 『お前は、鈴と違って、感情なんてないんだな。私たちなんて、どうだっていい存在なんだな』って。 感情なんて…もう、ないのかな。 私に、もう感情なんてなくなってしまったんだろうか…。 ぼんやりと、そんな事に思いを馳せていると…、 「ああ、もう、兄ちゃん!焦げてる焦げてるってば〜」 妙に焦げ臭いにおいと共に、鈴の声がした。 「あ…、鈴…」 「鈴、じゃないよ〜、も〜。兄ちゃんは…火事になったらどうするの?」 「す、すまない…、」 「しっかりしてそうで、兄ちゃんは抜けているんだから!」 ぷっと頬を膨らませ、怒る鈴。 通常、こんな表情、男子生徒、しかも高校生にもなる人間がやれば寒いだけだが…自然と鈴がやると愛らしく、頬が緩んでいく。 [*前へ][次へ#] [戻る] |