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狼御礼・拍手短編・番外編小説  (槙村・ヤマト)

 思わず手を出して受け取ってしまったリオラは、顔を赤らめた。
「困ります、此処にはもうお越しにはなさらぬ様に、お願いします」
 ばあやが困って外に眼を向ける。どうやらひとりで来た様だと解った。
「内緒にすれば大事無かろう?」
「…伯爵様」
「君、リオラって云うんだね。友達になろうよ」
 リオラは双眸を見開いた。
「友達?」
 ドクンと胸が高鳴った。初めて云われた。
「そう。だって将来義理の兄弟になるんだから。今から友達になってもおかしくはないだろう?」
 ―――友達。
 リオラは甘酸っぱい気持ちで俯いた。


 その夜、ジンは不機嫌な顔でやって来た。リビングの椅子に腰を掛け、ばあやは既に館へ戻っている。リオラはジンの隣に立って、いたリンゴを皿に載せて差し出した。
「森の動物達が騒いでいる」
「え?」
 リオラは首を傾げてあぁと頷いた。
「今日鷹狩があったんだよ。鷹って遠くから初めて見たけど、大きいね」
 ジンが手を伸ばして、右頬にそっと触れた。眼が怒りで紅い。
「転んだの…僕おっちょこちょいだよね」
 リオラは何でも無いように云うと、ジンは身体の小さいリオラを膝に乗せた。リオラは紅くなって固まる。
「嘘はいけない。鳥達が見ていたぞ」
「鳥?」
「あぁ。今もほら、小窓に居て心配して見ている」
 リオラは信じられないと、小窓を振り返る。するといつの間に居たの、小鳥や鹿が部屋を覗いていた。リオラは吃驚して「うわあ」と呟く。嬉しい。傍で見たい!
「凄い!」
 リオラは膝から降りようとして、ジンに阻止された。ムッとして暴れる。
「っ!」
 顎を取られ、唇が重なった。舌が絡まりチュッと吸われる。
「あん」
「リオラ、俺を見ろ。他の男は見ないでくれ」
 リオラはハッとして、ジンを見詰めた。
「愛しているんだ」
 裾をたくし上げ、大きな手がリオラの背を撫で上げる。リオラは恥ずかしくて唇を噛んだ。ジンの手で上半身裸にされ、テーブルの上に寝かされる。
「ジン?」
 いつもと違う。リオラは潤んだ眼で見上げた。
「俺を受け入れろリオラ」
 リオラは意味が解らずに首を傾げる。するとジンは苦笑してリオラから衣服を全て奪ってしまったのだ。真っ赤になったリオラは起き上がろうとする。が、それよりも早くリオラの陰茎を唇に含んだのだ。直ぐにリオラは甘い声で啼く。
「此処で俺を受け入れるんだ」
 咥えたまま、ジンは硬い蕾を指先でなぞる。リオラは息を呑んで双眸を見開いた。
 指先を蜜で濡らしてから、再び蕾を撫でる。ジンジンと其処が熱くなり、腰が揺れる。
「気持ちいいか」
 紅い舌を覗かせながら、リオラはいやいやと顔を振る。蜜を溢れさせながら、じゅるりと吸われる。リオラは入って来た指に涙を零した。ジンから受ける愛撫は好きだ。気持ちが良くて、こんな事いけないのに。
「だめっいっちゃうっ!」
 隠微な水音を立てながら、ジンはリオラを堪能して、その蜜を吸い上げる。
「あうっ!」
 ビクンビクンと震わせて、リオラは啼きながら気を失った。ジンはリオラを抱き上げて、寝室のベッドに寝かせると、ベッドの端に腰を下ろした。
「今はまだ早いか…」
 金色の髪を撫でる。左肩の羽の痣に眼を止めた。
 ―――天使の羽。
『神の怒りを受けるが良い』
 あの日、他国の敵に斬られ殺された少年。ルリ。あまりの悲しみにナイルへ連れて行き、共に死の国へ行こうとこの首を切った。その時、現れたのは大きな羽を持つ男。美しく神々しい男。あの男はなんと云ったか。
刹那、この身に起きた激痛。変化して行く骨格。気付けば狼の姿だった。
『それは神の手から生まれた魂。それを死なせた者は時の 狭間に閉じ込めた。この世が終わるその日まで。だがお主。それを守らなんだ。神はお怒りだ』
 確かその男にも同じ羽の痣が無かったか?
 雷鳴が鳴る。
 ―――いつになればこの身は許されるのか。
 神よ。


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