狼御礼・拍手短編・番外編小説 (槙村・ヤマト)
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リオラは首を傾げて見上げる。
「昔の息子の服しか在りませんけど」
ばあやがジンに着替えを手渡す。サイズは驚く事にぴったりだった。
「かたじけない」
「何をおっしゃいます。大事なお坊ちゃまをお助け下さいましたのですもの」
ばあやはこのジンを直ぐに気に入って、ジンの分の夕食を用意した。
夜、眠りに着いたリオラの耳にガリガリと爪でドアをひっかく音がした。
最近、森で見付けたオオカミを保護して、首の怪我を手当てしてやったのだが、暫らく見なかったので、森に帰って行ったのかと思っていた。
リオラは急いでドアを開ける。
「どうして…」
オオカミはしっぽを振りながら、口に咥えた籠を床に置いた。中には沢山のラズベリーが入っている。このオオカミは怪我で気を失っていたばあやを背に乗せて、この小屋まで運んでくれたのだ。最初こそばあやはパニックを起こしていたが、此処まで運んだのがこのオオカミだとしると、掌を変えて歓迎した。
「おいで」
中に入れると、暖炉の前で身体を伸ばす。
「ありがとう。でもどうしてこれを」
リオラはオオカミを見詰めると、やがてオオカミは昼間の青年に変身した。
「っ! ジン?」
驚いて息を呑んだ。逞しい全裸がリオラの眼の前に現れたのだ。
「逢いたかった」
ジンに眼を見詰められて、リオラはハッとした。
「魔女…なの?」
ジンは苦笑してそうかも知れないと云う。
「昔神の怒りに触れてこうなった。転生を繰り返す彼(か)の者の傍に辿り着く運命」
「神様の? …僕もきっと神様に嫌われてるんだ」
「どうして?」
「だって」
ポロリと涙が頬に零れた。
「僕を生んで母上が亡くなったのは僕のせいだ。父上にも嫌われるのは仕方ない」
ジンはリオラの涙を指で拭うと、愛しげに告げた。
「綺麗な色だ。リオラ。私の半身」
口付けが降る。
初めてのキスにリオラは真っ赤になった。
「ジン?」
「愛している」
抱き上げられ、ベッドに横たわらせられると、リオラは涙を浮かべた。
「僕を好き?」
誰にも愛されなかった命。
「愛している」
リオラは双眸を閉じた。
寝間着を脱がされ、露わになったピンク色の乳首を愛しげに口に含む。リオラは吐息を零してジンの少し硬めの髪に触れた。舌先で突かれ、チュッと吸われて甘い息を吐き出す。ジンは濡れた乳首に息を拭き掛けて、背を伸ばしてリオラの唇にキスをした。
「ん、ん」
口腔内を蹂躙するジンの舌はまるで生き物だった。
「あ、ぁジンっ」
腰が揺れる。初めての行為にリオラは熱く火照る身体を揺らす。頬に、首筋に肩に舌が触れる度にビクビクと身体が震えた。やがて経ちあがった陰茎を手に掴んで、口に含む。
「ひあぁ、あぁ!」
じゅぶじゅぶと水音を立てて舐めしゃぶられて、リオラは性液を吐き出した。ごくりと呑まれて羞恥する。
「リオラ」
熱い息。
「リオラ」
愛を込めて呼ばれた事の無い名前。リオラは熱く硬いその砲身を身の中へ迎えた。
ジンはよくこの小さな家に来るようになった。ジンはばあやに、自分を狩人だと説明し、その手にはウサギや鳥等を仕留めては持って来てくれていた。すっかりこのジンという青年を気に入ったのだ。何よりリオラの話し相手になってくれるのが嬉しかった。
リオラの心は満たされていた。
「北国とはどんな所なの?」
「夏が短く、冬は凍てつく世界に覆われる。夜は闇が無い。白夜と呼ばれている」
リオラは眼を輝かせた。
「行ってみたい」
だが、直ぐにその双眸は翳る。
「何故? いつか俺と行こう。きっと行ける」
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