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狼御礼・拍手短編・番外編小説  (槙村・ヤマト)

自分が不幸だとは思ったことはない。
だけど、今≠ェ間違いなく幸せで。
どうしようもなく、尊いものだと感じてしまう。
これが、誰かを愛するって事なのかな…。



「里桜、」

とびきり甘い顔をして、こっちにおいで、と手招きするセンセイ。
もとい、俺の恋人で義理の兄小早川疾風、さん。
センセイは、ソファーに腰かけながらも、俺を呼んでいる。
上機嫌で鼻歌でも歌っていそうな勢いだ。

まるでペットを呼ぶかのように、こいこい、と俺を呼んでいる。


「なんですか…」
「いいから、警戒すんな…」

おそるおそる近づけば、警戒した猫のように思われたのかセンセイは笑い俺の後頭部に手を伸ばし引き寄せる。ソファーに座るセンセイの膝の上。

ふわり、と、センセイのシャンプーの匂いが鼻をくすぐる。
センセイの、匂い。
俺の好きな匂い


センセイも、俺の髪を梳きながら、

「いいにおいだな…」
と零す。


「い…犬みたいに嗅がないでよ…、」
「ん〜」

センセイは俺を膝に乗せ、腰を掴む。
俺も俺で体制が崩れないように、センセイの肩に手を乗せた。

普段、上目線で見ている先生と、同じ視線になる。
凄く近い距離に、改めて恋人になったんだな…と再認識する。

センセイの膝に乗せられて、抱きしめられる俺。
少し前なら、恥ずかしくて嫌がっていた俺だけど…センセイが何度も俺にするから少しは慣れてしまった。
ただし、こうして人がいないところのみ、だけど…。


「いい匂いなんかじゃないです…、シャワーも浴びてないし…」
「里桜のいい匂いがする…、シャワーなんて必要ねぇよ…」
「でも…、やっぱり、」
「黙れ…、お前不足なんだよ…、」

そういって、センセイはギラギラした瞳で俺を見つめ、顎を掬う。

「キス、させろよ…、」
「ん…っ…」

久しぶりの、キス。
センセイ、出張だったから、会うのも久しぶりなんだけどキスも久しぶりなんだ。


深い深い、口づけ。
まるで、離れた日々を補うかのような口づけに、熱い吐息が毀れ落ちる。

センセイのキスは激しくて、少し煙草の匂いがする。
今も、歯列をなぞりながらも、舌を絡める大人のキスだ。

舌を吸われ、まるでむさぼるように仕掛けられるキス。
逃げても、すぐ捕らわれ、翻弄される。

捕まえられて、甘く吸われ、愛撫される…。

「ふ…ぁ…」

恋愛経験があまりない俺は、そんなキスにすぐ翻弄される。
ぼんやりとした瞳でセンセイを見れば、センセイは俺の唇を撫でながら、

「まだ、たんねぇな…」

そういって、再度口づける。
幾度に渡る、キス。俺も必死にそれに答えようとするんだけど…センセイには叶わない。

ついには、ふにゃん、と力が抜けてセンセイによりかかってしまった。

「ギブアップか…?」

クスリ、と微笑むセンセイ。
くそう、余裕があるからって…ずるい…。

いつも俺ばかり翻弄させられる。
きっと今、俺、顔真っ赤だ…。

「…キス、しすぎ…」
「これぐらい、足りないくらい…、」
「足りない…?」
「お前を前にすると、全然たりねぇよ…」

恥ずかしい言葉を、さらりと言うセンセイ。
前はオレさまで、俺を奴隷扱いしていたくせに…
恋人になった今では、センセイは、人がいないときはこうやって愛の言葉を度々囁いてくれる。

さらり、と。俺が欲しい言葉を言ってくれるんだ。
センセイは言いなれているのかな。
センセイと違って俺は子供で、恋愛経験も豊富じゃないから…。
俺はいつだって、翻弄されてばかりだ。

エッチだって、まともに出来ないし…。
きっと、センセイだって楽しめてないんじゃないかな。

センセイは、俺が好きだったて言っていたけど、どうして俺なんかが好きなのか、今でもわからない。
今でも、信じられない自分がいる。



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あきゅろす。
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