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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編)
再婚相手
 昨年の我が校は荒れてたから、鈴は上級生に眼を付けられていたけど(自分の女にしたかったらしい)剛と里桜と、今の担任教師が事前に回避して守っていたから、鈴は無事に高校生活を遅れた。他のちょっと見目の良い奴は、性処理にされたりして、最悪だったんだ。
 可愛くて、泣き虫で、でも本当は正義感の強い、空手が少し使える(剛が教えた)奴。
 天音鈴。剛は鈴が大好きだ。


 鈴は教室へ入り、机に鞄を置くと、黒板に書かれた『自習』に双眸を見開いた。
「終了式の日に自習?」
 剛が鈴の許へやって来て訝しんだ。
 鈴と里桜、剛は2年になって同じクラスになっていた。
「あの担任、職務放棄か?」
「それは無いと思うけど、HRまでににいちゃん戻れるかな」
「大丈夫じゃね?」
 それよりもと、夏休み何処へ行くかと話は弾んだ。剛のにやけ顔に、傍で見ていた女子生徒は、キモイと一言呟いた。
 やがてHRが始まると、担任、小早川疾風が教室へやって来て、号令が掛かる。背の高い男が、入口の鴨居にぶつかりそうになった。
「あれ?」
 剛が呟いたと同時に、鈴が挙手をする。
「なんだ?」
「先生、兄ちゃんが来てません」
「んあ? あぁ〜。体調不良で少し休んだら来る。それより高橋これ配れ」
「…へ〜い」
 一瞬にやけた剛が、疾風から夏休みの栞を受け取り、呟いた。
「朝から盛ってんなよ犯罪者」
 剛の言葉に疾風は口角を上げた。
「現役なんでね」
 剛は呆れて「あっそ」と返答した。
 鈴はそんな会話が聞こえる訳も無く、回って来た栞を手にしながら、里桜の居ない席を見詰めていた。


 鈴は休み時間になると急いで保健室へ行き、扉の所で里桜と鉢合わせをした。
「兄ちゃん、具合大丈夫?」
 鈴は里桜のほんのり紅くなった顔を見る。
「あぁ…大丈夫だよ鈴」
 里桜は苦しげに眉根を寄せて、鈴を優しく抱き締めた。
「…兄ちゃん?」
 鈴は里桜の腕の中で身じろぐ。
「大丈夫。ちょっと風邪をひいたみたいだ」
 鈴は気になって、里桜の額に触れる。
「風邪? 帰りに隼人さんとこ行く?」
 里桜は刹那、唇を噛んで顔を逸らした。
「そうだね…」
「熱あるのかな」
 鈴の手が里桜の頬に触れ、里桜は気持ちよさそうに双眸を閉じる。
「鈴はお母さんに似て心配症だな」
「そう? あ、僕のプリン帰ったらあげるからね? でも牛乳は駄目」
「頑張っても鈴は成長止まってるよ」
「酷い、まだまだ伸びるから! それに、兄ちゃんとそんなに身長変わんないじゃん!
 そんな事云ったら プリンあげないよ?」
「ごめんごめん」
 里桜は笑いながら鈴の頭を撫でた。
 

 その日の夕刻。鈴はタクシーから降りて、薫から教えられた料亭を見上げた。
 北千住に在る、老舗だという『流千』は、近頃雑誌に載る程人気が出ていた。韓流俳優がお忍びで利用した事から、人気が出たらしい。
「鈴、行くよ」
 タクシーの支払いを済ませて降りた里桜が、鈴の肩を叩く。
「兄ちゃん、風邪大丈夫なの?」
 放課後、小早川医院へ行ったのだが、『休診』の貼り紙にがっかりした鈴は、里桜の体調を気遣った。
「大丈夫。お母さんが待っているから行こか」
「…うん」
 2人は暖簾を潜って引き戸を開けた。
「いらっしゃいませ。小早川様のお連れ様ですね?」
 女将と思われる恰幅の良い女性がにこやかに出て来た。2人は顔を見合わせて、首を傾げる。
「あの、天音ですけど…」


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