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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編)
生徒会到着
 今時の女性らしく、垢抜けた雰囲気の美代が、じろりと剛を睨んだ。
「早い話がヤキモチか?」
 疾風が呆れて云う。
「え? 俺『熊』?」
 剛が自分に指を差して美代に訊く。確かに剛は身体が大きく、シャツを3番目まで開け、銀の細い鎖のネックレスをしている。女性から見れば、その辺にたむろする不良に見えるのだろう。でも、熊って。
「美代、良い加減にしろ」
「だってお兄ちゃん!」
「「「「お兄ちゃんっ!?」」」」
「え〜と、紹介します。俺の双子の妹の美代です」
「「「「双子…」」」」
「よろしく!」
 明るく云う美代に、全員が呆けた。
「あれ? 俺記憶無いんだけど…?」
「あ〜あれ? 最近私催眠術に凝ってて〜試しにかけちゃった 私ってすご〜い。でも簡単に引っ掛かるなんて、馬鹿なの?」
「「「「こ、怖い…」」」
 全員が青褪めた。
「美代っっっ!!!」
 春彦は青筋を立てて叫んだのだった。 


「…鈴っ!?」
 社務所に来た鈴達は、里桜達生徒会メンバーに出迎えられ、ずぶ濡れの鈴を見付けた里桜が驚愕した。
「なんで里桜達?」
 剛が疾風を見る。
「他校との顔合わせでな」
「鈴、なんでずぶ濡れ? 風邪をひくだろう? まったく!」
 自分のカバンからタオルを取り出して、鈴の頭を拭く。
「…兄ちゃん…」
 鈴は戸惑いながら、ごめんなさいと謝る。
「兎に角、風呂だな。鈴風呂入って温まれ」
 疾風が云う。すると背後から、
「ふ、風呂…、天音が風呂入るぞ」
 生徒達が手にタオルと着替えを持って待ち構えていた。男子生徒達が鼻息も荒く眼を輝かせる。
「は? 何云ってんのよ? 鈴ちゃんは私と入るのよ。ね?」
 全員が『え?』と首を傾げた。
「…誰ですか?」
 それまで黙って見守っていた柊が口を挟む。鈴はこの人が苦手だ。
「俺の妹」
 春彦が苦笑しながら答えた。
「鈴ちゃんは『女の子』なんだから、ヤロー共と入る訳ないでしょう?」
「おんなのこ…」
 鈴は小さく呟き、くるくる回りながら自身を見る。やはり女の子にしか見えないのかと、がっかりした。
「…鈴、真っ青だよ?」
 笑いを堪えた隼人が鈴を慰めるが、鈴はむくれていた。
「そんなことより風呂だ」
 疾風の言葉に男子生徒達は、ハッとして頷く。
「君達は近くの温泉に行く。鈴ちゃんはウチの風呂使いなさい。それと、美代は鈴ちゃんと入れません」
「「「「なんで?」」」」
 美代と生徒達はブーイング。
「鈴ちゃんは『男の子』です」
「うそっ!」
「すみませんね男の子ですよ、美代さん」
 鈴は悔しくて、里桜に抱き着いたのだった。


「ほれ、鈴忘れ物」
 風呂から上がった鈴に、隼人が忘れ物だと云う荷物を寄越す。あの後、強制的に生徒達は疾風に連れられて、近所の銭湯(寺から徒歩で10分)へ行った。
「忘れ物? …あっ」
 鈴はカバンの中から、教材を見詰める。
「夏休みの課題、わざと忘れただろ?」
「えっと〜」
 鈴は苦笑いを浮かべて、眼を逸らす。
「り〜〜〜〜ん」


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あきゅろす。
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