鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編) 切なさと懺悔 保健室はシンと静まりかえって誰も居なかった。 鍵は掛けられていなかったので、鈴とジンは中へ入った。遠くで賑やかな声がする。 「此処で待て。薬を探すから」 ジンは鈴をベッドに腰を下ろさせると、薬棚を漁った。 「ジン」 鈴はジンの後姿を見詰めて、ジンを呼ぶ。鈴の声にジンが振り返った。喧騒が遠く聞こえる。 「僕……アメリカに行く」 「―――鈴?」 薬を探す手を止めて、ジンは歩み寄り鈴の隣に腰を下ろした。ジンが隣に座ったのを眼の端に捉えると、俯いた鈴は唇を開く。心臓がドクドクと鳴った。 「だから…」 鈴は乾いた唇を舐める。 「ジンに……来て欲しい。一緒に」 「っ!」 ジンが双眸を見開き、感極まって鈴を抱き締めた。鈴は左手でジンの右腕に触れる。 「一緒に…ジン」 鈴が顔を上げる。鈴は胸の奥がギュッと苦しくなった。でもそれは不快ではない。今はこの男が愛おしいのだと、魂が訴えていた。 ―――そうだ、この感情は『恋しい』んだ。 性急に唇が重なる。鈴はジンの舌の動きに応えて絡めた。 ―――気持ちいい。 「ん、ふぅん…」 くちゅくちゅうと舌を絡め合いながら、ジンは鈴の背を撫でた。唇が離れる。 「……愛している。やっと、おまえがこの手に入るんだな?」 熱い眼差し。鈴は両手でジンの頬を包むと、顔を傾けて再び唇を重ねた。 「ジン…好き」 鈴はベッドに抱き上げられ、シーツに押し付けられる。鈴は高鳴る心音に、ジンの手を取って押し当てた。ジンが微笑む。 「可愛いな鈴」 「んっ」 体操着を捲られ、2つの乳頭を舐める。 「ふあっ」 唾液で濡れた乳頭に歯で軽く挟んでこりっと擦る。鈴の腰が浮いた。 「あ、あっ」 ジンの右手が鈴の白い腰を撫で、短パンを肌着ごと脱がされた。プルンと陰茎が飛び出して、透明の蜜を零している。 「あぁ、ジンっ」 「声を抑えていろ」 「?」 ジンが下方へ移動して、両足を開かせて間に胴を入れた。顔は下肢に下がる。 「ひうっ! あぁぁっぁ!」 口内に含まれた陰茎が震える。鈴は右手で唇を抑え、左手でジンの頬を撫でた。スリットを舌でなぞり、チュッと蜜を吸いあげる。 「んんんんっ」 ビクンビクンと身体が震え、鈴の白濁をジンが恍惚として呑み込む。 「ジン…も、う」 秘孔が切なくヒク着くのが解る。だが、ジンは鈴の腰を持ち上げて、鈴の顔を見ながら舌を出して秘孔を舐めた。鈴の眼に、蜜を垂らす自身とジンの熱い眼が嫌でも眼に入る。 「直ぐに入れてやるから待て」 ジンが秘孔の皺を舐め、ヒク着く内壁に舌をこじ入れた。 「はうっ、ぁぁぁ、んん」 腰が揺れるのを止められない。早く欲しい。早くと。今すぐにでもジンが欲しかった。 ジンが鈴の腰を下ろし、バックルを外して自分の硬くなった陰茎を取りだした。 秘孔に熱い陰茎が押し当てられる。鈴は熱い息を吐いた。 ―――ジン。 グッと押し込まれた陰茎に、鈴が喉を逸らす。胸が突き出てジンが乳頭に吸い付く。カーテンの向こう側、ドアの先が気になったがもう鈴はどうでも良くなって来ていた。 鈴は両手をジンの背に回して、ジンは性急に鈴を穿った。ギシギシとベッドが鳴る。 「ジンっ声がっ!」 ジンは鈴の唇を貪った。声はジンに全て吸い取られた。 鈴の服を整えて、ジンは飲み物を買って来るからと耳打ちして保健室を出た。念の為にジンはオオカミの力であずさの匂いを探る。近くには居ないと判断して、廊下を出た。 鈴はぐったりとベッドに横になっていた。が、ふと何かに呼ばれるように双眸を見開いた。 何かが鈴を呼んでいた。 「……ジン?」 鈴はジンを探しにベッドから降りる。脚が少しふら付いて頬が熱くなる。 鈴はドアを開けて保健室を後にした。その後ろ姿を、あずさは見詰めていた。 鈴は人ごみの中を歩いてジンの姿を探した。念の為に隼人の姿も探す。見掛けたら身を隠す為だ。だが、鈴の願いは神に聞き入れては貰えなかった。鈴の細い左腕を隼人が掴んだのだ。 「鈴っ」 鈴は呆然と隼人を見上げる。その眼には怒りが潜んでいた。病院の帰りなのか、そのまま学校へ来たらしい。 「話しがある」 隼人は鈴の腕を離すまいとしっかり掴んでいた。 「隼人さん? あの、あずささんも一緒なの?」 「あの人は居ない。私がひとりで此処へ来たんだ」 「でも!」 隼人は深い溜め息を吐いた。鈴を振り返る。 「おなかの子の父親でもないよ私は」 ―――どういう事? 言葉の出ない鈴に隼人は解らせるように、ゆっくりと掻い摘まんで話し始めた。 「私の身体は元々子供を作り出す精子が機能しないんだ」 「え、でも! あずささんのおなかは」 「それは私が訊きたい方だ。大学で男子生徒の精子を凍結保存する話しが出たんだが、その日は私は熱を出して休んでいた。誰かが私の名を語ってラベルに貼り付けたらしい」 鈴は驚愕して双眸を見開いた。 ―――そんなっ 「君が昨日アメリカへ行くと云い出して、パズルが填まるように記憶が戻ってきた。何故アメリカへ行こうとした? 私との約束は」 「約束……」 「そうだ、将来医療ボランティアで海外へ行くという私の願いを、君は聞き入れてくれていたと、私は思っていた。違うのか?」 鈴は混乱していた。鈴は隼人がもう遠い所に居るのだと思っていた。だから、ジンの思いを考え愛おしくなって……。好きになって。 「ごめ……なさい、隼人さん僕は……っ」 鈴はハッとして隼人の背後を見た。 今2人は人混みから少し離れた階段の踊り場に来ていた。保護者や生徒の喧噪で気付かなかったのだ。 「隼人、そんな子にあなたを奪われたくないわっ」 「!?」 あずさの声に隼人が振り返る。両手には刃物が握られていた。鈴を背に庇う形で立っていた隼人の脇を擦り抜けた鈴が、隼人の前に躍り出た。 傍に居た生徒が悲鳴をあげる。 「鈴っ!!」 [*前へ][次へ#] [戻る] |