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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編)

「そうなのよ。でも来年には役員交代だから少しさみしいかも。里桜も来年は生徒会役員交代でしょ?」
「うん。3月までが任期だよ。先月から、選挙の立候補始まってる」
「そう。もう早いわね。里桜も鈴も来年は高校3年制かぁ。大学はどうするの? もう決めてるの?」
 薫が煮物用の器を食器棚から取り出す。
「まだ何を目指したいとか、思いつかなくて」
「焦る事ないからね? それはそうと鈴はどうなのかしら」
「モデルとか?」
「あ、俳優とかもありそうね」
「「………どっちもありそう」」
「なんの話?」
 ビクッとして、薫と里桜が振り返る。鈴がお茶を頂戴とやって来た。
「お、おかえりなさい、鈴。あら、凄い汗、顔も紅いわよ? また熱?」
 薫が調理中の火を止めて、慌てて鈴へ歩み寄る。
「大丈夫だよ。少し走ってたから。先お風呂使うね」
「どうぞ」
 薫が里桜へ視線を向ける。
「たまには兄弟で入ってきたら?」
「え?」
 里桜がなんで? と薫を見た。どうやら進学を聞き出せと云いたいらしい。だが、鈴は兄弟でお風呂が嫌だったらしい。めちゃくちゃ嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「狭いお風呂で嫌だよ。温泉じゃあるまいし」
 里桜が黙って、薫に抗議の眼を向ける。
「なんか少しショックなんだけど?」
「…まあまあ大変だわ里桜、鈴が初めての反抗期だわ」
「は?」
「今夜はお赤飯に決まりよ」
「え?」
「パパに電話しなくちゃ」
「あの?」
「お祖母ちゃんにも電話ね! 姉さんには内緒だけど」
「お赤飯…」
 そういえば、詳細は覚えていないが去年薫と喧嘩した夜、何故かお赤飯が食卓に並んだのを思い出した。あれは息子の記念日だったのかと赤面する里桜だった。


 湯舟に浸かると、鈴はジンの身体を思い出して赤面した。快感でジンにしがみ付いて、だけど直ぐに覚醒して慌てて衣服を整えた。
『信じられない、こんな所で!』
『こんな所でなければいいのか?』
『違う、そうじゃない、もうっもうっジンの馬鹿っすけべ!』
 まるでドラマに出て来る女の子のように叫んで、逃げてしまった。思えばあんなに立派な物があって、それも完屹ちしていたのだ。鎮めるのにどうするんだろう?
「自分で?」
 唇が渇いて舐めた。鈴は自身の陰茎に触れて左手で唇に触れる。あの唇があの舌が、陰茎を舐めて、吸ったのだ。
「ん…」
 ダメだ。隼人がいるのに。
 早く思い出して。迎えに来て。子供が出来たなんて嘘だと云って。
「…僕、最低だ」
 鈴の涙が湯に落ちて、波紋の様に広がった。


 翌日学校へ行くと、早くもメイドの服は人数分の半分は完成したらしい。ようは簡単に着脱できるような物にしてあるらしいのだが、早速鈴は着替えさせられた。
「やだ可愛い!」
 女子が盛り上がる。男子は呆然と赤面していた。が、その隣に立つ剛に顔が引きつった。
「メイドは天音鈴だけがいい」
「心の声が聞こえてるぞ」
 男子が教室の隅で泣いている。何故か剛を囲んで女子達が記念にと写真を撮りだした。
「インスタに出す」
「母ちゃんに殺されるから却下」
 剛が嫌がる。そこへジンがカメラを片手に教室へ入って来た。後ろに女生徒が群がっている。まるでホストの様だと思って鈴はムッとした。
「鈴、似合ってるじゃないか」
「嫌味?」
 拗ねる鈴が可愛いと、ジンがカメラを向ける。昨夜の出来事を思い出して紅くなった。 
「あ、里桜君、おはようこっち、試着して!」
 里桜が扉の所でギョッとなり、Uターンしようとしたが男子に阻まれた。
「お前だけ逃げるのは狡いからな」
 剛がニヤリと笑う。鈴が苦笑い。男子は鼻息が荒かった。
「な、えっ!?」
 その後、神業の様に着替えさせられた里桜を疾風が発見し、衣装は最後にお持ち帰りだと決めたのだった。


鬼畜狼と蜂蜜ハニー 第3部 完

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あきゅろす。
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