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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編)

 里桜が呟いて、まさかと云った。
「兄ちゃん?」
「まあ聞け。ツインソウルとは元々ひとつの魂がこの世に生まれて来る時に、2つに分かれた事だ。現に『リオラ』はよく鏡に向かって、自分に語り掛けていた」
 里桜が真っ青になって両手を膝の上で握り締めた。
「魂はもともと男女の魂が組み合わさってひとつになっていた」
「なんで?」
 鈴が訊く。
「男女の愛を学ぶためだ。お前達は出逢った瞬間気付いた筈だ。心で解るからな」
 外の雑音すら耳に入らないぐらい、鈴と里桜がジンを凝視する。
「ジンの存在は、兄ちゃんにも知って欲しかった。相談も無しにごめんジン」
「いや、それは構わない。里桜の魂は自由だ。それにもう私の手が届かない場所へ、心が離れている。今は鈴が傍に居れば良い」
「別の場所?」
 鈴が訊く。
「心を許した愛しい者が居るだろう」
「っ!」
 里桜は疾風を想って紅くなる。
「ちょっと待ってよ、俺の事より鈴がなんだって? 鈴には隼人さんが」
「無理だ」
 一刀両断したジンに里桜が息を止め、鈴が眼を伏せる。
「あの者はその昔私の『友アンリ』であり『あの女の婚約者ロバート』だった」
「「……」」
「あの女って」
 里桜が眉間に皺を寄せる。嫌な予感しかしない。
「あずさとかいう女は昔リオラの姉だった者だ。そしてリオラを殺させた女だ」
「「っ!」」 
「あら、何? こんな所で」
 鈴と里桜がギョッとなって振り返る。薫が選択した白いタオルの山を、籠に入れて院内の裏口から入って来たのだ。
「お邪魔しています」
 立ち上がったジンが薫に挨拶をする。
「こんにちはジンさん。なあにあなた達、お客様を病院の方に寄越して。ジンさん、ちょうど頂いた洋菓子が在るから、リビングへどうぞ? それと、鈴、倒れたんだから大人しくしてなさい」
 鈴が「は〜い」と立ち上がる。
「ありがとうございます」
 ジンは何食わぬ顔で一度外へ出ると、鈴を振り返る。
「どうした」
 鈴は急かされて後について行った。
「あずささん、リオラのお姉さんだったの?」
「あの女の先祖はリオラの家系だ。なんらかで日本に流れたのだろうな。それに神はあの一族に呪いを掛けている」
 後について歩いていた里桜が脚を止めた。
「呪い?」
「左右違うオッドアイだ」
「「は?」」
「でも、あの夢が本当…なら」
 ジンに睨まれて里桜が小声になる。
「本当なら『男子』にしかオッドアイが出ないんじゃ? それとも違うのか? あずささんのお兄さん、普通の眼だったと思ったけど」
「その男はきっと養子だろう。訊いてみると良い。それに母方の方があの国の貴族の末裔の筈だ」
「なんで」
 里桜が疑問をぶつける。
「なんであんたがそこまで知ってんだよ? おかしくないか? 偶然にも程がある。何処かで調べて来たりとして」
「それは無い。お前も見ただろう。私が人狼だという証拠を」
「犬じゃなくて、狼!?」
「そういう事だね。成程」
「おま、何呑気な事云ってんだよ鈴、お前は昔からそういうとこがっ」
「兄弟喧嘩するな。腹が空いた洋菓子で良いから食わせろ」
「「……」」
 ジンは余程腹が空いていたらしく、薫の勧めで夕飯まで食べてもう遅いからと、隼人の部屋へ泊まる様に春臣が進めた。
 里桜は心配だと鈴を自分の部屋に泊めさせる。
「兄ちゃんどう思う?」
ベッドの下で敷いた布団の上で胡坐をかく鈴が、ベッドでやはりこちらも胡坐をかく里桜に問う。
「どうもこうも、夢であって欲しいもんだよ。前世とかツインソウルとか、あの隼人さんがロバート?」
 夢の中の出来事に紅くなる。
「俺は疾風さんがっ」
 何やら里桜がもごもごと云い訳を繰り返していた。


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