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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編)

「…」
 鈴と里桜が顔を見合わせた。
「前世って夢に見るの?」
 オカルト好きな川辺りさは、興味深々に割り込んできた。
「もしかしたら同じ人物が何回か出てくる?」
「「出てくる」」
 里桜が驚いて鈴を見た。
「お前も?」
「うん。僕のは古代エジプト」
「俺は中世ヨーロッパ」
「面白そうだねそれ、前に夢に出て来た2人の人物が、何度も生まれ変わって、この時代に巡り合うの。ロマンチックだわ」
 うっとりとする川辺りさは、予冷の鐘に慌てて席に戻って行った。鈴も急いで席に着く。
「前世?」
 そんな馬鹿なと、里桜は苦笑した。でもしっくりと来ない。もしそうなら、あのジン・イムホテップはどうなのだ。初めて見たのにあの男は里桜の見る夢に出て来ていた。それにあの夢には続きがある。イムホテップが人の姿に変身して、リオラが狼から成人男性に変身した時に見た、首の傷に触れて。
 かと思えば、リオラの姉があのあずさに似ているとか。幾つもの夢を里桜に見せるのは何故だ。
「馬鹿らしい。魔女だとか狼とか」
 たかだか夢の話しだ。第三者が聞けば、頭が可笑しくなったと思われてしまう。里桜は溜息を零して黒板の前に出た。これから秋の文化祭に向けて、クラスの出し物を考えるのだ。
 黒板には、疾風がチョークで『文化祭の出し物』と書いている。因みに保護者達は毎年豚汁を作って、販売している。
「去年はチョコバナナとか作って売ったけど、今年はもっと違う物が良いんだけど」
「お化け屋敷とか?」
「それは隣のクラスがもう提案で出してるからアウトだ」
 疾風が云う。生徒達ががっかりする。要はさっさと出し物を決めて、帰りたいのだ。
「ねえ先生、私メイド喫茶やりたい!」
「面白そう、っでもうちの女子らが?」
 男子が嫌そうに訊く。
「何よなんか文句あんの!?」
「な、無いです」
「馬鹿だな正直に訊くなよ」
 項垂れた男子の後方から、他の男子の揶揄が飛ぶ。
「普通のメイド喫茶じゃないわよ? 男子が女装してメイドやって、女子が執事やんの」
「うえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
「それ決定っ!」
 女子と男子が真っ二つで叫ぶ。鈴はキョトンとしていた。
「鈴君も里桜君も絶対可愛いメイドになれるわよ?」
川辺りさがウインクする。一斉に視線が里桜に向かった。
「良いなそれ」
 疾風がにやけたので、里桜が睨む。
「疾風先生話が解る〜」
「で? メニューだな問題は」
「飲み物はコーヒーとかオレンジ、ジンジャーで良いんじゃない?」
「うちには幸運にも調理部が5人も居るわよ?」
 女子達がどんどん話しを進めて行く。
「俺メイドの恰好するのか?」
「うわっキモ」
「うっせーお前もな」
「でも、鈴がメイド」
 その言葉に男子が黙る。ミニスカートに二―ハイ姿。鈴への妄想が膨らみ前屈みになる男子が続出。無言で教室を飛び出す数名の男子に、女子がブリザードの眼差しで見送った。
 衣装はサイズがまちまちなので、裁縫が得意な子達が布の回収から始める事になり、メニューはケーキとプリンを作る事にして、材料購入の班に分かれた。


 隼人はあずさの指定して来た駅の改札口に居た。
「お待たせしてごめんなさいね」
 ピンク色のショートワンピースを着たあずさは、幸せそうに微笑する。
「何処へ行きますか?」
「水族館。昔デートした所が良いわ。思い出を作りたいの」
 あずさは隼人の腕に手を添えて、改札口を抜けると丁度やってきた電車に乗り込んだ。あずさはおなかをそっと撫でて、車窓の外を見詰める。
「鈴君凄く良い子ね。可愛らしくて、女の子のようだわ。あんな子が実の弟なら、可愛がれたのに」
「…先輩?」
 あずさは横に座る隼人を見る。
「夢に出るの。私があの子を殺す夢」


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あきゅろす。
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