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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編)

 隼人に呼ばれて上条は鈴を離す。隼人に手を差し出し、2人は握手を交わした。
「君が連れて来てくれたんだね。ありがとう。隼人くん、だったかな?」
「覚えていて頂いて光栄です。ご活躍はテレビでよく拝見させて頂いています」
「ありがとう」
「話はそこらへんで良いかな?」
 いつの間にか見知らぬ紳士が居る事に驚いて、鈴はその人を見た。隼人に名刺を手渡している。
「上条のマネージャーで、秋元といいます」
「「初めまして」」
 鈴と隼人が頭を下げる。
「私も鈴君の写真を見せて貰ったけど、実物はもっと可愛いな。男の子に失礼な言葉だけどね」
「写真…?」
 鈴は首を傾げて上条を見る。
「私が渡したのよ。薫が撮った写真をおばあちゃんが私に送ってくれていたの」
「おばあちゃんが?」
 鈴はまだ鈴音がさえ達と連絡を取っていた事に、ホッとした。
「ゆっくり話していたいけど、ごめんね? 次ぎの仕事が控えているから、もうそろそろ撮影の支度して欲しいから」
 秋元が何処かに電話をすると、直ぐにスタイリストだという女性が2人入って来た。
「ヘアメイクと衣装担当さん。撮影場所は隣の部屋を確保してるいからそちらで」
 鈴はスタイリストに促され、衝立の向こう側に案内された。


 鈴は真っ赤な顔で上条に抱き締められている。解っている事だが…隼人は複雑な想いで見詰めていた。
「ヘアメイクと衣装担当さん。撮影場所は隣の部屋を確保してるいからそちらで」
 鈴音の声にハッとすると、鈴がスタイリストの女性に衝立の向こう側へ案内される処だった。チラリと見えたが、鈴音の女装させる話しは本当のようで、フリルの付いたワンピースが見える。それも何着ものデザインの異なる服が在るらしい。向こうから、鈴が驚く声を上げた。
「男の子の服も在るわよ? 女装オンリーと思ったけど、この際性別不明でミステリアスに行くわ。ウイッグとカラーコンタクトは用意してあるから」
「…隼人君」
 声を掛けられ上条を見る。こちらは既に衣装に着替えていたようだ。ソファーに腰を下ろす処だった。
「君も座るといい」
「はい」
 鈴が気になったが、上条に悪い印象を抱かせたくない。此処は素直に従って腰を下ろした。
「君は鈴の小さい頃を見ているのかい?」
「はい。天使のようで可愛かったですよ?」
「そうか…。俺は知らなかったとはいえ、鈴の存在を知った時は驚いたし、胸が暖かくなった。俺はガキの頃に家族を事故で亡くしているから、家族は俺にとっては大事なキーワードだ」
「…だから引き取りたいと?」
 上条は真っ直ぐに隼人を見る。
「我儘だと云われても仕方がないとは思う。だが、夢を見てもいいだろう? 家に帰ればお帰りと云ってくれる鈴が居て、鈴音が居る光景を」
 上条は楽しそうに話す。きっと普通の家庭にある姿を思い描いているのだろう。上条の胸が暖かくなったという言葉。彼は素直な男なんだろうと、隼人は押し黙った。
「着替え終わりました」
 スタイリストの声に、ハッとする。視界に上条が立ち上がるのが見えた。衝立の方を見ると、鈴がワンピースを着ていた。
「鈴」
 長いウイッグを着けた鈴は、苦笑しながら片頬を指で掻いている。
「……鈴音の高校時代を見てるようだな」
「私もびっくりよ」
 鈴音が口に手を当てる。2人が並ぶと姉妹のようだ。鈴は隼人を見て、どう? と眼で訊いてくる。
「中々似合うよ?」
「…ちょっと複雑…」
 鈴は唇を尖らせる。あぁ、あの唇にキスをしたい。だが、此処では拙いので後のお楽しみとしよう。鈴は鏡台の前に誘導され、カラーコンタクトの付け方を教わり、メイクアーチストに化粧を施された。


 何だか長い一日だった。ウイッグ無しの時は途中で、シャワーで流せるヘアスプレーを使うと説明されたのだけれど、自分の女装に愕然とした。「鈴音の高校時代を見てるようだな」の言葉に、ちっとも嬉しくないと顔に出したが、気付いて貰えないばかりか「中々似合うよ?」の隼人の言葉にいじけてしまった。
 撮影は隣の部屋を使った。バルコニーではしゃぐ鈴=女の子を恋人? の上条が新作の口紅を手に、鈴の唇に塗るシーン。


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あきゅろす。
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