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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編)

 まさか、此処だけゴミ屋敷なんて事は…。
「今日だけよ。いつもは片付けてるわよ」
 背中を押されて鈴は部屋の中へ押し込まれた。今更だが嫌な予感がする。
「あの〜?」
「私思ったんだけど、鈴ちゃんってお肌綺麗よね?」
 顎に手を充てられ上向かされた。
「えっと?」
「お姉さんと楽しい事しましょう? それで『男の娘』になろうね?」
 −−−ほえ〜〜〜〜〜っ!?
 指をポキポキ鳴らしながら、生まれて初めて女性に責められそうになる。
「わ、わ、駄目っやだ、服脱がせないで!!!」
 部屋の外まで鈴の切羽詰まった声が響く。
「やあん、鈴ちゃん。肌、吸い付くみた〜い。あら、キスマーク?」
「いっ?」
「な〜んてね? ていっ!」
 美代は思い切って鈴のスラックスを引っ張り脱がした。
「ぎゃあっ!!」
 ひっくり返った鈴はベッドへ放り出される。
「すっぽんぽんな鈴ちゃん、可愛い」
「か、か、可愛くないっ!」
 鈴は女の子を投げ飛ばせずに真っ青になる。因みに鈴の両手は下肢を隠すため情けない姿。
「写真撮って良い?」
 鈴はピキンと凍り付き、絶叫した。
「ダメ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
 これでもかってぐらいの絶叫です。
「駄目ったら駄目ですっ!!!!!! 却下ですっ!」
「ち。残念。でも〜? 鈴ちゃん左腕に変わった痣が在るのね」
 羽を広げた小さな痣。
「まるで天使の羽みた〜い」
「美代ちゃん?」
 うっとりとして呟く美代の背後で。
「美代、煩いぞっ!」
 バタンとドアが開き、ガタイの大きな男が云うなり、鈴の姿に固まった。
 全裸の鈴は涙を浮かべて赤ら顔。
「…失礼しました」
ドアが再び閉まる。
「…だ、誰?」
「弟の浩哉。今年20歳になった、この家の後継」
 ふ〜んと呑気に云いかけ、鈴はハタと今の状況を思い出す。
「それより服っ!」
「返すわよ。でも、先にこっち」
 見せられたのは、フリルの付いたミニのワンピース。
「…………はい?」
「私、妹が欲しかったの。鈴ちゃん可愛いし、ピッタリ私のタイプ」
「僕、男の子ですが?」
「大丈夫大丈夫 気にしない」
 −−−気にします、僕がっ。
 美代のにこやかな笑顔が怖いと、鈴はベッドの上で後退る。


「なんだか2階が賑やかね?」
 浩哉がキッチンに入ると、母親が昼食の支度をしていた。
「美代、女の子連れ込んでる」
「? 日本語可笑しいわよ? 浩哉。顔紅いけど大丈夫なの? 夏風邪かしら?」
「…母さん、俺やばいかも」
 浩哉は動悸のする胸を抑えた。白い肌が眼に焼き付く。抱いたら折れそうな華奢な身体。
「一目惚れしたかも」
「あらまあ」
 母親はびっくりして浩哉を見上げ、2階からは悲壮な悲鳴が聞こえていた。


「大丈夫よ、ほら。ばれないって。写真撮れば服返すから」
 美代に手を引かれて、境内を歩く鈴は太腿に絡むフリルのスカートを気にしながら、前方を歩く剛に出食わした。
「…あら、熊男」
 やな奴に遭ったと、美代と剛は互いに眉間に皺を寄せ、隣に居る鈴と眼が合った。ウイッグを付け、化粧された鈴は半ば諦めて眼を逸らす。
「熊じゃねー、ってか、どっかで見たな。………おいっ!?」 
「う」
 剛が驚いて鈴の腕を掴む。
「鈴、そっちの趣味があったのか? なんだ、そのかっこうは? 可愛過ぎっ! お、うわっ!?」


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