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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編)

「厄介な男に捕まったよな、お前」
「失礼な」
「兎に角、親父が連絡しろって俺に電話が来たんだよ。お前電源切ってただろう? 鈴は携帯をカバンに入れっぱなしだし」
「……充電が切れてました」
 隼人は自分のスマホを起動したが、直ぐに画面が切れる。
「医者としてあるまじき事態…兄貴、携帯貸して下さい」
 呆れた疾風が自分の携帯を貸す。隼人はそれを借りて自宅に電話を掛けた。


「すみません、隼人です」
『隼人? 急いで帰宅しなさい。大学時代に付き合っていたという女性が、昨夜来て…』
「はい? 誰ですって? 誰の事を云っているのか解りませんが」
『お前…思い出せないぐらいの人数と付き合っていたのか?』
 電話の向こうで呆れた声がする。不安そうに、隼人を見上げてくる鈴の肩をポンと叩く。
「昔の話です。で? 私に何か」
『総合病院の院長の娘さんらしい。婚約したいと、娘さん直々に来たんだが…』
「…思い出しました。都内に在る病院で、大学時代の先輩です」
『…兎に角帰って来い。夕方にでもまた来ると云っていたからな。薫さんは良い縁談だと喜んでいるが…お前には、鈴君の事も有るから』
「……解りました」
『疾風に変わってくれ』
 隼人は携帯を返す。
「父さんが変われって。私は自宅へ帰宅します。鈴、私が居なくても痴漢に気をつけて」
「おい! それをお前が云うか?」
「よく解んないけど、気をつけてね?」
 隼人は持ってきていた荷物を受け取り、再びタクシーに乗り込んだ。
「もしもし? 今隼人がタクシーに乗って出た処…え? 総合病院? ……………解った」
 電話を切った疾風は右手で口を覆い、鈴を見る。タクシーは遠くなり、鈴は寂しそうだ。
「…先生?」
「…もう昼だ、中入って飯食え」
「う、ん…」
 踵を返す疾風を、鈴は眉間に皺を寄せて見詰めていた。


 鈴は宿泊施設に戻ると、上がり框にしゃがむ美代を見付けた。不貞腐れた美代は、とても30歳を前にした女性とは思えない。
「鈴ちゃん遅い! もう、何処行ってたのよ」
「ごめん…て、あれ? 美代ちゃんどうしたの?」
 美代は悪戯を見付けたように、鈴の手を握り外へ促す。
「良い事思い付いたの。私の部屋来て!」
「え?」
 無理やり手を引く美代の横顔は、キラキラしていて綺麗だ。
「そういえば、生徒会の人達合同で会議だって?」
 美代に訊かれて、鈴は頷く。
「なんか3つの高校が、話し合いするみたい」
「ふ〜ん。何だか浮かない顔ね。何か心配?」
 美代は一瞥して訊く。
「う〜ん、心配ってのはあるかな。ウチの王欄と鳳凰学園ってのが、凄く仲悪くて去年は大変だったんだ。 でも、疾風が顧問になってから落ち着いたけど、ここに来て話し合いってなんだろう。兄ちゃんが纏めてくれると思うけど」
「お兄ちゃん? ああ、夜鈴ちゃんと居た子?」
「うん。長男の疾風先生。で、次男の隼人さん、3男の里桜兄ちゃん、で、末っ子の僕」
「いいな〜美形兄弟! ね、次男坊素敵よねカッコよくて。美代のお兄ちゃんって美男ってより、美女っぽくて。でも、美代のお兄ちゃんと鈴ちゃんの次男のお兄さん、絵になるわよっ」
「…は?」
 鈴達は宮根家の自宅に着くと、おじゃましますと声を掛け住宅に入った。日本家屋の大きな家だ。
「私ね〜実は『腐女子』なの」
「ふ、ふじょし? なあにそれ?」
 鈴は首を傾げて美代に訊く。
「知らない? 今流行りなのよ? 私こう見えて近くの中学で教師やってるけど、女子生徒達が嵌っててつい私も…ね」
 鈴は眼を瞬かせて、美代の部屋の前で止まる。ドアに掛かったプレートが可愛い猫の顔で『MIYO』と書かれていた。
「あ、ごめん腐女子って男同士の恋愛に応援? みたいな〜」
「お、男同士?」
 ドキリとして、鈴は赤らむ。
「さ、入って?」
 ドアを開けた先には、散乱した衣服と化粧品が存在をアピール。
「こ、これは?」


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あきゅろす。
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