鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編) ずっと、一緒 「鈴?」 「あ…」 「お前」 泣いている鈴を見て、剛は自転車をほうり出し、鈴を抱き締める。 「どうしたんだよ!?」 「〜〜〜っ」 追い掛けて来た隼人と眼が合った剛は、怒りも露わに威嚇する。 「てめぇっ鈴に何しやがった!?」 「鈴を放せ」 隼人の声が背中から聞こえ、ピクンと震えた。 「ふざけんな! 鈴は俺の家に連れて帰る!」 「鈴っ」 「中に入ろう?」 「…やだっ!」 鈴はぎゅうっと剛の上着を掴んだまま、鈴は剛を見上げた。 「剛んとこ行く」 「おう行こうぜ?」 ざまあ見ろと隼人に一瞥をやり、自転車を拾って荷台に鈴を座らせた。が、鈴は身体が後方へ揺らいだのに驚いた。 「ひゃっ!?」 「鈴!」 隼人の手が鈴を抱き上げる。ぶわっと涙が溢れた。 「行くな鈴!」 放さないと、隼人は鈴を抱き締めた。鈴は俯いたまま隼人の胸に縋る。 「鈴…」 剛は唇を噛み、チラリと里桜を見る。苦しそうに見詰める里桜の肩を、疾風が抱き寄せていた。 「ずっと隼人さんが好きだったんだ」 少し落ち着いた鈴は、隼人に手を握られて、リビングのソファーに座っていた。 隣には手を握って放さない隼人が居る。向い側に里桜と疾風が居た。 「鈴は何でも持っていて、みんなから大事にされて。でも俺は…お兄ちゃんだから、ずっと我慢して、好きな人も諦めなきゃって思って、でも、昨日の隼人さん見てたら…鈴しか眼に入っていなくて」 鈴は真っ青になって里桜を見詰めていた。ぽろぽろと涙を零す里桜に、鈴は俯く。知らなかった。里桜はずっと頼れる兄で。まさか隼人を想っていたなんて。 「僕……ごめ…」 「鈴」 隼人が鈴の背を撫でる。 「謝らなくて良い。悪いのは俺だから。鈴を羨ましく思ったのは俺だから」 鈴は顔を横に振った。 「鈴は俺の弟だから、大事にしなきゃって。でも悔しくもあって、どうしていいのか解らなくて」 疾風が里桜の後頭部を撫でてやる。疾風の里桜を見る眼が愛しさに溢れていた。 鈴はその事に気付いて、何だか胸が暖かくなった。 「僕も兄ちゃんが大事。ごめんね? 僕鈍感だから兄ちゃんの気持ちに気付かなくて。僕は隼人さんが好き。兄ちゃんの事も大好きだよ? 兄ちゃんへの好きは兄弟としてだけど、あと、それとね? 僕気付いたんだけどさ、兄ちゃんの隣には、とっくに素敵な人、居るよ?」 里桜は首を傾げ、隣に居る疾風を見た。優しい笑顔にぶわっと真っ赤になり、刹那、疾風に抱き締められた。 「あの〜〜〜」 4人は声のする方へ眼を向ける。剛がやってられるかと、勝手気ままに朝食を自棄食いしている。 「なんだまだ居たのか」 「ひでぇよ先生! 云っとくけどあんたら未成年者に手ぇ出したんだからな?」 云われて、兄ちゃんと僕が紅くなる。 「黙ってたら解らねえよ」 「わ、ひでぇ極悪人。…俺帰るわごちでした〜」 「剛」 「わりいな鈴。今話せねえや」 出て行く剛を見詰めていたら、隼人さんに片手で眼を覆われた。でも、隼人さんの手をどけて見る。剛は振り返らずにそのまま出て行ってしまった。 「鈴、2階に行こうか?」 握られた手が熱い。鈴は躊躇し、里桜を見る。里桜は気付かないふりなのか、本当に気付かないのか、キッチンへ飲み物を取りに立って行った。 「鈴」 隼人が立ち上がり、鈴は促されて立ち上がる。階段を上がった先で隼人が振り返り、屈んで口付けて来た。 「ん…」 「もう私から離れないで鈴。ずっと待っていたんだから」 [*前へ][次へ#] [戻る] |