Novel
2
ジャカジャカと耳障りな音楽が鳴り響く中、目の前でチップがチャリチャリと移動していく。
後ろには友人二人が目をキラキラさせながら、俺の手札を見つめている。
「―――コール。フルハウスだ」
「っくそ!!」
目の前の男が苛立ったようにダンッとテーブルを殴った。
俺は男のチップをかき集め、ふうっと軽めのため息をつく。
「50万しっかり返金していただきまーす」
「「アキー!」」
お前等は双子か、といいたくなるくらい息ぴったりに抱きついてきた二人。
本当、馬鹿な奴らだけどこう懐かれると可愛く感じちゃうんだよなあ。
「っこんなの、イ、イカサマだ!」
「あのねーオジサン。ディーラーがカード配ってんのにどうやってイカサマしろっつーのよ」
「そこのディーラーを金で買収してんだろ!?」
矛盾しまくってるオッサンの言い分に、俺は呆れ半分バカバカしさ半分で酒をあおった。
馬鹿だろこの人。ディーラー買収する金あったら、50万位とっくの昔に払ってるっつーの。
「うるせえんだよオッサン!イチャモンつけんじゃねえ!」
「ショウくーん?ちみも暴れないでねー」
「いてっ!」
レンよりも幾分血の気の多いショウは今にも飛びかかりそうになったが、俺とレンでベシッと頭を叩いて止めさせる。
コイツは後先考えず突っ込む癖はそろそろ直させよう。
そんなこと考えてると、目の前のオッサンがプルプルと震え、怒りに満ちた真っ赤な顔でガタンと立ちあがった。
奴の右手には鋭く光る中型ナイフ。
ああこりゃまずいな、と俺も軽く身構えた。
「おじさーん。そこまで怒らなくたっていでしょ?結局はプラマイ0何だから」
「・・・っ調子に乗るなよ餓鬼!」
「お、お客様!?」
こちらにナイフを突き出したオッサンに慌てるディーラーのお姉さん。周りの客もこちらを凝視し、騒ぎたて始めていた。
あらまあお姉さんよく見ると、ぽってりとした唇がセクシーで美人だね、とこの期に及んで美女ウォッチングをする俺。
そちらに視線がいってるのに気づいたのか、オッサンはさらに逆上してコチラに向かってきた。
それに迎え撃つよう構えるショウとレン。
俺は掌に顎を載せながら、テーブルの下でパキパキともう片方の手の指を鳴らす。
「糞餓鬼ぃぃい!!―――ぐあぁ!」
苦悶の声と共にカランとフロアに落ちるナイフ。
クルクルと回転しながら床を這って行くそれは、真っ黒な靴によって踏みつぶされた。
「今更こんなところで金稼ぎか?随分と楽しそうじゃねーか」
低く腰にクるようなテノールボイスが、フロア全体に響き渡る。
今まで騒がしかったこのフロアは、そのたった一言で静まり返った。
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