[携帯モード] [URL送信]

.
 【連れ出した空】
   


※この作品は企画ページのリンクからのみ閲覧できます




【連れ出した空】



「金久保先輩、最近体調は大丈夫ですか?」
インターハイまであと2週間。
部員たちはみんな部活、弓道の練習に勤しむようになる時期だ。
今年の選抜メンバーはみんなそれなりの実力のあるメンバーだと思う。
だから、私も足を引っ張らないように、黙々と精神統一、そして練習を行っていた。
そして、しょうがないこととはわかっていながらもだんだん部員たちのストレスは溜まっていった。

いつもなら言わない、飲み込む言葉さえ口げんかの元となる。
いつものことだから、で済まないような喧嘩だって起こっていない訳ではなかった。

それを止める係ももちろん必要で、そのひと一人がその役目をするには負荷が重すぎたようだ。

「神聖な場所で何してるんだ、」
そう叱れば喧嘩は止むのだけれどもそのあとに残された空気は重い。
だから、精神的に部長は疲れてしまっているだろうと推測し、声を掛けた次第。

「部長、大丈夫ですか・・・? あの、良かったら、星が見えるところに、行きませんか?」



金久保先輩にとっては、高校最後のインターハイ。
だから、部員たちはいままでお世話になったお礼として、絶対優勝してやると意気込んでいるのだ。
だが去年のこともあり、部長が自分に対してあまり自身を持てていないのではないかと見えた。
最後のインターハイは、最高の結果を残したい。
最高の思い出を、金久保先輩に捧げたい。
それは私をはじめとした部員全員合致の意見である。


隣を並んで歩ける幸せ、長いようで短い時間。
先輩と出会ってから、卒業を迎えるまでのように。


「大丈夫だよ、ただ・・・」
そう言って私だけに本心を話してくれることが嬉しい。軽い笑い話だけでなく思い話もしてくれると、
信頼されているんだな、と実感する。
そして思い話をする前にはきちんと私に確認をとり最後には聞いてくれてありがとう、と
お礼を言うのを忘れない。そんな部長が・・・大好きだった。


「また、足を引っ張ってしまったらと思うと、みんなに申し訳ないし・・・それが、怖いんだ。」
下を向いて、ぽつぽつと話す部長。
「でも私は、先輩が頑張ってくれるというより、日ごろのとおりにやればいいと思ってます。
 だって先輩、いつも頑張ってるじゃないですか」
金久保先輩に対しては、自分が思っていることを素直に言える。
取り繕ったことを言ったとしても金久保先輩のためになんてならない。
むしろ、傷つけてしまうかもしれない。
正直な心でぶつかっていったほうが絶対金久保先輩のためになるだろう、と思っているから。

「うん、ありがとう」

そう言って立ち上がった先輩。
そっと座っている私の手をとって、引かれる。

言葉で伝えられないもどかしいことだって、沢山ある。
だけど、手をつないで歩くだけで心が静まることだってある。
そう、だから、それだけのことだけど。
私はぎゅっと金久保先輩の手を握り返す。
それですべてが、伝えられるような気がしているから。






-------
20091230
松本ゆうい

お題(王子様にkiss)提出用です・・・!
最近脳内のstskキャラは病んでるんですけどどうしましょう。






第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!