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拍手ろぐ
2009年10月度 射手×蠍






季節はずれ、ではない長雨に悩まされながら頭のなかに思い浮かべてしまうのは寡黙で真面目、だけど格好良いという言葉が似合う、あの先輩。

ああ僕はいつも、先輩の邪魔をしてしまっている。本心はちゃんとお喋りしたいと思っているのに。

「喧嘩するほど仲がいい、意味分かるかな?」
そう悪戯をする子供のような笑顔で、意味ありげに訊いてくる金久保先輩。
「それは、どういうことですか…?」
研究やら実験との名目でガラクタを作りまくるアイツくらい、いやそれ以上に分からなかった。
「意味は分かります」
常識的に、意味は知っていた。
「たまには素直になってみたらどうかな?」
いつも素直に言ってるつもりだが…。金久保先輩は、何が言いたいんだろう?


【After,After,Obedient】



放課後、ミーティングがあるって言ってたから、30分前だという事も気にせずに部室に向かう。多分宮地先輩はもうとっくに部室にいて、自主練習でもしているのかな、なんてふらっと考える。
戸を開けたのに意に反して、誰もいないがらっとした部屋。
誰もいないなら、こないうちに練習をしてしまおうと思い、弓を持ちに行く。
すると、ひとり体育座りで俯いている人影が見えた。きっと、そう。宮地先輩だ。だけど休息中にしては変。
「先輩、体調悪いんですか?」
「わ、悪いわけないだろ」
少し無理をしているように見える。
「僕が保健室まで運びますよ」
本当に体調が悪そうだったから、良心から言葉がさらっと出た。
「…む。遠慮すると言ってるだろ」
強がる先輩はいつものことだが、今日は放っておく事ができない。
「気にしないでいいからさ、先輩。」
よっこらしょ、と宮地先輩を抱き上げる。自分よりも先輩のほうが背が高いせいで、意外と自分にも負担はくるが気にしないで運んでいく。
耳元で先輩が呼吸する息が聞こえて、少し感覚が高ぶる。
「いいって言ってるだろ」
そう言って先輩は腕を振り払い、僕から降りてしまった。しゅんとしていると
「だけど不安だから一緒に保健室まで来てくれ」
そう言って手を引かれる。宮地先輩がそんなこと言うなんて思っていなかったから、少し自分まで照れた。隣にいる宮地先輩の頬も少し赤かったが、熱のせいだけじゃなければいいなと思った。
保健室に誰もいなければどうしようかな、少し悪戯でもしてあげようかな、だけど病人だからまた今度にしてあげようかなと脳内で葛藤していた事は先輩には秘密。

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あきゅろす。
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