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2009年08月度 慧side
貴女が愛しい。ただそれだけだ。



【MASQUERADE】




先生に恋?―――友人に相談だって、した。
だけど冗談だと思われたのか…ちゃんと返事をしてくれなかった。
やっぱり、好きになってはいけない対象だって心の中では気づいてる。
だけど、止められない時だって…あるんだ。



風が冷たくなり、吐息も白く色付く季節に、僕は貴女に対しての思いを…断ち切ろうと思っていた。
報われないのを、知っていたから。
だから僕は、僕ではない何かにすまして、貴女だけを見ていたかった。
僕だと分かってしまったら、いつもの【僕の先生】になってしまう気がして。



ダンスホールの隅で、佇んでいる貴女。
いつもより何十倍も幾らか美人に見える。
「一曲、お相手願えませんか。」
手を差し出す。
貴女は僕を見上げる。だが僕だとは分かっていないようだ。
嬉しい気持ち、そしてほんの少しだけ怖い気持ちがして、手が震える。
「す…少しだけなら」
お世辞にも上手とは言えないダンス。
貴女が転ばないように、ステップに併せてフォローする。
そうしているうち、この曲もラストが近づいていることに気付く。
こんなに時間が早く過ぎたと思えたのは、初めてな気さえする。
「あの…ダンスお上手なんですね。――お名前は?」
「いえ、申し上げる程ではありません」
ここで言ってしまっては本末転倒である。 最後で台無しにしないように。
「あら…残念ね。」
本当に残念そうな顔をする貴女。
「最後に、キスしても良いですか――」

答えは、欲しくなかった。
だから自分から、答えがくる前にキスをする。
驚いた顔をする貴女を横目に、僕はその場を去る。
冷静そうに見せることができた自信はあるが…貴女を傷つけなかったか。
自分を自分でないものに偽ることが、貴女を傷つけない為に僕の選んだ選択肢。
もうこれ以上は求めない。
だから明日からの僕は、貴女の生徒、です。







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