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那智×慧   【ハロウィンの魔法】*
「那智…」
とぼとぼとアホサイユに入ってきた慧。
おれはアホ達の採点係。
「どうしたの〜?」
少し目をやりながら僕はまた目の前の答案に視線を戻す。
が、もう一度と言わず何度も見返してしまった。


なにか可愛い生き物がいる。


【ハロウィンの魔法】

「ほじょおと〜戻ってきて…」
目の前に可愛い、可愛い、何度言っても足りないくらい可愛い慧がいるのだ。
まあもちろん今までの普通ににこにこしている慧も可愛いが、今日は本当に可愛い。

那智のその頭には、先のとがった魔女の帽子。そして魔女の衣装を着ているのだ。
そう、今日はハロウィン。
そういえばジャック・オ・ランタンが飾ってあったりするなあ、と今更気づいた。
「けい…」
息を飲むしかなかった。
既に知っていることであるので分かってはいたが、少し大きめに作りすぎてしまったのか袖から覗く華奢な指。学校内で手袋をしているのが見慣れた光景だから、いやに新鮮な香りがして、可愛かった。
そして、こんな衣装を着用している恥ずかしさからなのか、顔が赤い。
自分からやりたいやりたい!と手を挙げたような反応ではないので、誰かが衣装まで準備して慧に着せたのだろう。
その誰かが誰だかはわからないが、感謝せざるを得なかった。
「慧、誰にその服貸してもらったの?」
「何故だかわからないが、多智花が持ってきていて着ろ着ろうるさいから…」
うしろで、ぼくいいことしたでしょ、みたいなことを伝えたいのだろう多智花満の面の笑みが見える。
「慧、可愛いよ…」
そっと、低く、慧の耳元で囁く。
するとかあっと耳まで赤くなる慧。





「あの兄弟はいつもらぶらぶしてて目のやり場に困るっち…」
次の言葉を繋ぐ前に、発せられた言葉によって遮られた。
「それがあの兄弟だから、ねぇ?」
「せめてトリック・オア・トリートくらい言って欲しかったナリ〜」
「お菓子か、悪戯かね…、まあ二人きりにしておいてやろう、よな?」


空気の読める二人は、アホサイユから離れていった。



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20091102




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