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千聖×那智  【I feel lonely w/o U】


【I feel lonely w/o U】



少しだけ、新しい君を知りたいと思ったんだ。



「今日から兄さんが出掛けちゃうんだ…、いつも以上に生徒会を頑張らなくちゃ」
那智が呟く。
そうか、今日からお前の兄ちゃんはいないのか、と頭が理解してからすぐ俺の口から出たのは他愛のない話で。
「なあ、今日お前の家に勉強しに行ってもいいか」
いきなりの振りなのに、那智は笑顔で
「うん、別にいいよ」と答えた。
まあ実際は勉強というよりも、那智を知りたいと思う気持ちが大きく、なんだかんだで那智と喋る事を狙って行くみたいだ。


僕はそんな事分かってる筈だった。
けど自分の中で思いたくない現実として封印していたから。

「なあ、那智は何が好きなんだ」
まず始めの会話。
「なんだろう、うーん、いつもの僕を見ていれば分かると思うんだけどなあ、」
自分ではわからない、というような顔をこちらに向け、そしてすぐにまた目を伏せ勉強を始めてしまう。

無意識ではあったが、那智をまじまじと見てしまう。
可愛いなあ…なんて思いながら。
だけどその横顔には寂しさが滲んでいた。


少しの間慧がいないだけなのにこんなにしょぼんとしてしまっている。
慧は弟がこんな風になっているなんて、知る由もないんだろう。
那智はきっと、慧の前では寂しさを隠して完璧な人間でいようとしている。
分かってる。分かってるよ。
その想いを勉強にぶつけて、そこでまた那智は寂しさを忘れたいと思ってるんだろう。

ああ。こんな事に今まで気づいてない振りをしてきて。

もう外は暗くなってきた。
「那智、腹減ってないのか?」
何時間も前から机から離れていない那智に気遣ったつもりで声をかける。
「う、うん、なんか買ってこようか」
「俺も行くよ。」

そして二人でコンビニへ行くだけ。
自分は、もうあの寂しさに取り憑かれた那智の顔は見たくないと思ったから。
気晴らしになれば、なんて。

「なあ那智、俺はもう帰るよ。体調には気をつけろよ、いろいろ悩むことがあると体調崩しやすいからな。」
さらっと感情的にならずに俺は言う。
一瞬はっとしたような顔をしたのを、俺は見逃さなかった。


俺が求めたものはいつも俺の方には向かないで、俺と正反対のほうを向く。
それを忘れたいと思っても、制御が効かないときだってあるんだ。


だから最後に、自分に言い聞かせるように一度だけ、軽いキス。
驚く那智を置いて、俺は反対方向に歩き出す。








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20090614




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