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はあ、と一息ついて仕方なさそうに(心を落ち着かせるために、でもある)空いているソファに座るように促した。
「今の授業は?」
「体育」
「ああ、ハボックの授業か」
奴は調子が良いのが生徒たちに好評なのか、人気がある。それなのに、どうして授業を休む必要があるのだろうか(断っておくが、苦手な先生であれば休んでもいいという訳では決してない)。

少し長めの沈黙が続いた。5分、10分は経ったと思う。しかし、何を話せばいいのか分からないのだ。担任でも、特に仲の良い関係でもない。ただの教師と生徒。他愛のない話すら、臆病な私には出来ない。これが女性であったならば、簡単に射止めることが出来るのだけど。
この沈黙があるくらいなら、いっそのこと、消えてしまおうか。
「玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらえば…」
しまった、と思った時にはすでに遅かった。奥に引っ込んでいたはずの奴らは、私が油断しているのをこれみよがしに襲い掛かって来た。出て来たものは一つの和歌。上の句のみ。確か、下の句は、
「忍ぶることの 弱りもぞする」
私ではない。私ではない者が続きを発した。勿論、この部屋にいるのは私と目の前に座っているエドワード・エルリックのみ。私が発したのでなければ、自然と決まってくる。
「君、何でそれを」
エドワード・エルリック、その人が続きを発したのだ。どうして、どうしてこの和歌を知っている?



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あきゅろす。
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