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密やかな恋心は胸の中に

暖かな日差しに包まれ、思わず眠ってしまいそうになる午後2時過ぎ。執務室のデスクの上には、中尉が持ってきた書類が崩れそうな山の如く積み重なっている。しかし、こんな陽気な天気なのに、じっとこの囲われた部屋で机に向かってひたすらサインをするのも、一体どうしたものかと思うのは私だけだろうか?

現に、私はデスクに向かって一枚一枚目を通しながら、『ロイ・マスタング』とサインをする羽目になっている。それもこれも、これだけの書類を溜め込んで、屋上で寝ていた(人はこれをサボタージュと云ふ)自分が悪いのだが。今だって、いつもの様に眠りに行きたいのだが、生憎、今回はそれが出来ないらしい。


「大佐ー!!早くそれ、終わらせろよー!!中尉が困ってんだから!!」

ソファーから聞こえる声は、愛しい私の好きな人、基(もとい)、エドワード・エルリックのもの。

彼は私の気持ちには一切気付いていないようだが、何故か注意には気付かれてしまっているらしい(全く、どうして関係のない中尉が気付いているのだろう?そんなに私は分かりやすい人間なのだろうか?)。それを利用して、中尉は彼にこうして私がここから逃げ出さないように見張らせているのだ。そうされてしまったら、私は成す術もなく、ここから逃げだそう、だなんて言葉は跡形もなく消えていくのだ。誰だって、好きな人のいるところから逃げ出していってしまいたくはないだろう?


仮に私たちが両想いであったならば、中尉は彼をここに呼んでおいて行くわけがないだろう。2人きりになってしまえば、当然、甘い時間が流れていくからだ。


実際はというと、ただの私の片想いで、甘い時間なんて流れずに、ただ、『仕事しろ』という陳腐な言葉が飛んでくるだけだ。



まぁ、いい。彼と2人の時間が過ごせるのならば、いくらでも仕事をしてやる。この想いを打ち明けない限り、彼はエドワード・エルリックという好きな人として私のなかに存在するのだから。


「ああ、分かった分かった」


そう、返事を返すのも、彼との時間を一分一秒でも長く一緒に過ごしたいからだ。






* end * 






 

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