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そして全部の対戦が終わった後、太一はまるで殿様のように勝ち誇った顔をして、コントローラを床に落とした。
それに対して私は参りましたと言うように、コントローラを床に置くと、太一は満面の笑みでこう言った。

「じゃあ貯金した分、いっぱいキスさせるから」
「…!?──こ、声が大きい!」

お母さんに聞こえたらどうするの!?って言いながらダイニングチェアの方をそっと見ると、…さっきまでつまらなそうにゲーム画面のテレビを見ていたお母さんの姿は消えていた。

「……あれ、お母さんは?」
「晩飯の準備で台所にいるぜ」
「あ、本当だ」

聞かれてないかドキドキしたけど、台所にいるお母さんを見る限り聞かれてないみたいだしホッとした。


それより今は、もっと違うことで胸がドキドキしている──













──ガチャッ


「あ、あまりにも、恥ずかしすぎる…」

思わずコントローラを落としてしまった私は、平日の夕方の誰もいないリビングのソファーで一人固まっていた。

もちろんプレイヤーがいないゲームのテレビ画面に映る女の子もモジモジした状態で固まっている。

京ちゃんから「やってみなよ!」って言われて借りた恋愛のゲーム…乙女ゲー、だっけ。
色々な男の子と恋愛出来る、ってゲームらしいんだけど、丁度主人公のお兄ちゃんの名前が『太一』だったから『太一』を恋人にしようと頑張った結果……自分の飼っている猫の名前が被っていたのにリアリティーを感じたり、主人公の心情描写に恥ずかしくなって出来なくなった。


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