メイン小説 3 「ねぇ、私って今太一の恋人?」 小声で聞いてみると、太一は眉を八の字にしてちらっと視線を私から外した。 「…お前さ、冗談でもそんなこと言うなよ ヒカリの彼氏はタケル、俺の彼女は空だろ?」 目の前が真っ暗になった。 いや、それは感情的なものであって、実際には目の前は明るくなった。 そう、魔法がとうとうとけちゃったんだ。 「ヒカリー、起きなさーい」 お母さんの声がドアの向こうから聞こえてくる。 今は三月と言ってもまだ肌寒く、布団からは出れそうに無い。 そっとベッドの上で涙を拭くと、コンコンと今の気分にはそぐわない軽やかな音が、ひっそりとした部屋に響いた。 「ヒカリ、入るぞ」 ドアから出てきたのは既に制服を着た太一で、右肩には傷だらけのバックがかけられている。 「…今、何時?」 「七時半。 俺部活だからそろそろ行くけど、お前も一緒に来るか?」 一緒に来る? 私にも学校あるよ、って一瞬思ったけど、そういえば今日から春休みだった。 「部活終わったら午後出掛けようぜ。 だからそれまで俺のスーパープレイ見とけ」 笑顔でそう言ってくる太一に、私は大きく頷いた。 〔*back〕〔next#〕 [戻る] |