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友情と恋情の狭間で
嫉妬と欲望と愛情と

那智の登場にバーにいた皆が驚いていたけど、那智のことを紹介したら、みんな笑顔で迎え入れてくれた。

それで那智の機嫌が好くなることはなくて、じっと俺の隣でウォッカを飲んでいる。
チラリと盗み見ても、不機嫌なオーラが駄々漏れだった。

(…あのまま帰ったから、怒ってるのかな?)

気まずくて俺も無言のまま、さっき飲んでいたものを口につけた。
すると、いきなり首に腕が絡んできて、少し頬を赤く染めた凛太郎と、それを優しく見つめる薫さんの姿が見えた。

「いつまで拗ねてるんだ?」

「…煩い」


俺を間に挟み、凛太郎と那智が話し出す。
あの一件以来、凛太郎と那智は気が合ったのかよく大学内でも話すようになり、電話もするほど仲良くなっていた。

俺としては、親友と恋人が仲良くなることは嬉しいはずなのに。
どうしても、那智が俺といるのに凛太郎と仲良く話すのが寂しいと感じてしまっていた。
それは、那智の親友である健吾や蒼と話しているときでさえ…。

醜い感情が生まれるたびに那智に嫌われるのではないかと、バレないように隠してきた。

楽しそうに話す2人を横目に、俺は空になったコップを持ってカウンターの奥へと入っていった。
今日は薫さんの誕生日だから、カクテルを薫さんが作ることはない。
みんなほとんど作り方を知っているので、自分で作って飲んでいた。

「…知泉」
「雅明?」

作り終え戻ろうと振り返ると、少し心配そうな表情を浮かべた雅明が立っていた。
グラスにはまだ半分以上カクテルが入っている。
別に飲み物を作りに来たというわけではなさそうだった。

「……俺、そんな変な顔してた?」

「あぁ…。寂しそうな顔だったな」

クスリと笑い、雅明は俺の隣へと近寄る。
そして近くにあったパイプ椅子に腰掛け、俺の話を聞いてくれた。


「誰しも持つ感情だと思うぞ」

「でも…こんな汚い気持ち嫌だよ…。きっと…こんな気持ち知ったら、那智は俺のこと、嫌いになる」

「…知泉」

「………何?」

そっと雅明のほうへと顔を向けると、大きな手が俺の頭の上に置かれた。
そして、優しい温もりに包まれるように。
そっと雅明は微笑みながら、俺の頭を撫でている。

「嫌いになるはずがない。逆に考えてみろ。もし相沢に同じように思われているとしたら。知泉は、そんな感情を持つ相沢を嫌いになるのか?」

「…ううん。嬉しい…」

「そうだろ?だから、その不安な気持ちを話してみろ。ずっと一緒に過ごしていたんだ。知泉と相沢なら大丈夫だ」

そうだ。
不安なら話せばいい。
話して、それで2人で解決していけばいい。

雅明の優しさに触れて、俺は一筋の涙を零したのだった。






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