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友情と恋情の狭間で
不貞腐れた君に…

「駄目だ!!」
「いや…ダメって言われても……」

話し終えての第一声が「駄目」という渋い顔の那智の言葉だった。
凛太郎も待っているというのに、那智は一向に俺を放してはくれなかった。


「なんでダメって言うんだよ…」

「そんなケダモノだらけの場所に行かせられるわけないだろ!!」

「ケダモノだらけって…那智。それは失礼だよ」


薫さんの誕生日は、毎年お店でやっている。
薫さんの友達が来たり、お客もやって来る盛大なもので。
そのお客っていうのが、夜のほうのお客さん。
薫さんのお店が夜はボーイズバーになっているのを知っている那智は、俺が行くのを快く思わなかった。

「みんな良い人だし。大丈夫だって」

「良い人でも知泉を狙ってる奴がいないとは限らないだろ!!」

「だから、薫さんの誕生日に来る人たちは馴染みの人ばかりだから安心なんだって。それに俺は凛太郎たちとずっと一緒にいるし。那智が心配するようなことはないから!」

どんなに大丈夫だと伝えても那智の顔が変わることはなく、このままでは本当にそのまま那智の家に強制連行されると思った俺は、周りに誰もいないことを確認して、そっと那智の唇に俺のソレを重ねた。

俺からキスをしたことがないのだから、那智の瞳は驚きの色を浮かべている。
軽く重ねただけのキスが物足らなかったのか。
グッと背中に手を回され、噛み付くようなキスが降り注いだ。

「…ん、……ふっ、んぁ」

人がいないから良かったものの。
もし人が見ていたら色んな意味で大変なことになっている。

俺からのキスに満足した那智は、さっきまでの眉間に皺を寄せている顔が一瞬で幸せオーラを纏っていた。


(……単純だなぁ。那智ってこんな性格だったっけ?)


内心、今の那智が信じられないのだが、こうして機嫌が直ったことに安堵の息が洩れた。


「お〜い、知泉」

背後から俺の名を呼んでいる凛太郎の声が聞こえる。
そっと那智の拘束から逃れ、一目散に凛太郎のもとへと駆け出す。

「あっ、知泉!!」

「じゃ、終わったらメールするから。またね、那智」

まだ背中から那智の俺の名を呼ぶ声が聞こえるけど、聞こえないふりをして凛太郎と共に駐車場へと急いだのだった。



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