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友情と恋情の狭間で
待つ悲しみ…

「じゃ、ちょっと行ってくるな」

凛太郎は俺の頭をいつものように優しく撫で、ベンチから立ち上がる。

「…早く、帰ってきてね」
「今日は日にちの確認と諸事項だけだからさ。すぐに帰ってくるから…大人しくここで待ってろよ」

春の木漏れ日のような温かな笑顔を俺に見せ、凛太郎は行ってしまった。
遠くなる凛太郎の後ろ姿を見つめていくうちに…心がざわめき始める。

「………早く、戻ってきて、ね」

今にも消えてしまいそうなほどの声音で呟く。
一人残された俺は、しばらく空をじっと眺め続けた。
風に乗り、ゆっくりと漂いながら姿を変える雲。
真夏を思わすほどの輝きを放つ太陽。
今の季節にぴったりの心地のよい風。

「一人、じゃない…だから大丈夫…」

誰にも聞こえないほどの声で俺は言い放った。
震えそうな身体を、ギュッと抱えるように抱きしめ落ち着かせる。
そして、鳥の囀りは俺の心を安心させた。

俺は一人でいることが怖い。
どうして怖いのか…それは分からない。
自分のことなのに、自分の心が分からなかった。
俺の心は深い暗闇の中にあるようで…手探りでその中を探すようなもので。
ただ、無性に一人の時間が怖く誰かの温もりがなければ…息も出来ないほどの恐怖が俺を襲った。

だから、凛太郎が俺のそばにいてくれることがどんなに俺を救ってくれているのか…。
凛太郎に依存していることを他人から笑われても構わない。
そうしなければ…俺は見えない恐怖に殺されるから―――…。

安心しかけた気持ちが急にざわつき始める。

待つことが怖い…。
一人でいることが怖い…。
いつから…俺はこんなに弱くなってしまったのか―――――…。

「…凛、早く帰ってきて」

震える身体を力強く抱きしめ、薄れ掛ける意識の中…俺の名を呼ぶ声が聞こえた。


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