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友情と恋情の狭間で
失踪 side那智

3人で歩いていると、血相を変えた秋山凛太郎がこちらに向かって走ってくる。
その後ろには、2人の男性が秋山の名前を呼びながら追いかけていた。

俺の目の前で立ち止まったかと思うと、いきなり胸倉を掴まれ秋山のほうへと引き寄せられた。

「…お前の実家はどこだ!!!」

今にも俺を殺しそうな目つきで睨まれる。
何がなにやら分からない俺は、口腔内に溜まった唾を嚥下し秋山を見やった。
俺の隣にいた2人も驚いていて、ただじっと見ている状態。

「どこだって言ってるだろ!」

この前の口調からは考えられないほど、今の秋山は別人に思える。
俺は力強く掴まれているためうまく息も出来なければ、言葉を発することを儘ならなかった。

「落ち着いてください、凛太郎君」

綺麗な長い黒髪を後ろに括っている男性が、我を忘れている秋山の肩を優しく叩く。
ゆっくりとその人物を確認した秋山は、俺の服を放しそっと後ろへと下がった。

「すみません…」

「かおちゃんが謝ることないですよ」

「さっきの凛太郎君の行為は、謝らないといけませんよ」

「…………」


秋山の尋常でない言動に俺たちは固まった。
荒い呼吸を繰り返す秋山に、隣でじっと見ていた蒼が話しかけた。

「なぜ、那智の実家を?」

「それは…」

「薫。俺が話す」

「雅明…」


口ごもる薫に黒いスーツを身に纏った男が声をかける。
鋭い目つきが俺ら3人を捉え、低く静かな声で話し始めた。

「…知泉が姿を消した」
「知泉が!?」

その言葉に俺は目を見開く。
蒼と健吾は互いの顔を見合い、続きを促すように雅明という人物を見添えた。

「家にも帰っていない。だとすると―――」
「…お前の住んでた実家しかないんだよ」

腕を組んで、苛立ちを隠しきれていない秋山が俺を睨みつけた。

「俺の実家?」

「知泉は引っ越してきただろう?お前の近所に住んでいたことは知っているんだが」

「詳しい場所は聞いていなかったんです。携帯も切られていますし。知泉君のいそうなところを片っ端から尋ねるしか……」

なぜ知泉が消えたのか、その理由を話してくれていないが今はそれどころではない。

また…俺の前から姿を消すのかと思うと、俺は居ても立っても居られなかった。

「分かった。場所は教える。けど…俺も連れていってくれ」


「…………分かった」


背の高い雅明が俺を見下ろし、ゆっくりと頷いた。

雅明は振り返り、秋山に指示を出す。

「お前と薫は、もう一度この付近を捜してくれるか?」

「ええ…分かりました」

「分かった…」


納得いかないのか。
秋山の声は一層低くなる。

「凛太郎君。…那智君がいたほうが、効率がいいのは分かるでしょう」

「かおちゃん…。…大体、日向さんがあのことを話すから!!!」

「それは…」

「凛太郎君!…雅明も那智君と一刻も早く向かってください。もし何かあってからでは、どうしようもありませんから」

目線で促され俺と雅明は互いに頷き、俺は隣に立つ2人に立ち去り際に叫んだ。

「ごめん、俺行ってくる」

「気をつけて」

「見つかればええな。俺らも探してみるさかい。こっちのことは任せときー」

右手を大きく上げ、健吾が叫んだ。
俺はそれに大きく頷き、前を走る雅明の後を追ったのだった。




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