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友情と恋情の狭間で
夢月-むつき-

講義は午後4時過ぎに終わり、俺と凛太郎は帰路についていた。
夕飯の時間まで少し時間があるけど、家に帰ってまた出かけるのは面倒な話で、俺たちはそのまま薫さんが運営しているバー『夢月−むつき−』に向かうことにした。

時間帯にしたらまだ営業時間ではないので薫さんが1人で準備をしている頃なはず。
俺たちは、準備中と看板が出ているのを横目に扉を開けた。
俺たちにとって、準備中だろうが営業中だろうが関係ない。
薫さんとは店と客という間柄ではなく心知れた友人だから、いつでも来ていいと言われていた。

「こんにちは、薫さん」
「お久しぶりです」

俺たちは薄暗い部屋を突き進み、物音がするほうへ声をかけた。
すると俺たちの声と足音に気づいたのか、薫さんが店の電気をつけてくれて薄暗かった部屋に淡い光が溢れた。

「こんにちは、知泉君。凛太郎君」

店の奥にいた薫さんは、2人が来たことに笑顔で答えた。

薫さんは一言で表すなら美人っていえる。
俺なんかが言うのもあれだけど…すごく整った顔で、髪も肩まである綺麗な黒髪で。
独特の雰囲気をいつも身にまとっているので初めて見たときは近づき難い…高嶺の花っていうのかな?そんな感じだった。
今ではこうしてご飯を食べに来る以外にも遊びに来たりもしている。

「最近見かけなかったので、寂しかったんですよ」

薫さんは作業していた手を止め、俺たちの前に立つ。
寂しそうに微笑みかけられ、俺も同じように寂しい気持ちになり薫さんに抱きついた。

「俺も寂しかった…」

小さい声で薫さんの胸の中で答えた。
俺と薫さんでは身長差がかなりあり、薫さんは俺を抱きしめるために少し屈む体勢になる。

「同じように思ってくれていて嬉しいですね」

柔らかい言葉遣いに俺の心は安心感に満たされていく。
その光景をじっと見ていた凛太郎は、溜息を零しながらも優しい眼差しで俺たちを見守っていた。


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