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友情と恋情の狭間で
紅葉祭開催

「晴れたね、凛」

上を見上げれば、雲ひとつなく青い綺麗な空が広がっていて、紅葉祭を祝うかのように晴れ渡っていた。
俺の隣で凛太郎は優しい微笑みを見せ、そっと俺の髪を撫でる。

「そうだな。でも寒くないか、知泉?」

晴れていても10月は少し肌寒い。
薄着の俺を心配して、凛太郎は聞いてくれたんだと思うと嬉しくて顔が弛んでしまった。

「大丈夫だよ、そこまで弱くないって」

「そう言って、すぐに風邪をひくからな…知泉は」

「もう…凛は心配しすぎ」


頬を膨らまし、俺は凛太郎を見やった。
そんな俺の顔を見て、凛太郎はククッと笑い、「ごめん」と口にした。


まだ朝が早いこともあり、人足は少ない。
クラスの出し物は4人ずつ交代で当番をし、俺と凛太郎は午前の当番を受け持ったため、早くから大学に来ていた。
午前の当番にしたのも、凛太郎が役員の仕事で午後は慌しく動くため、俺を一人にしておけないって言われたから。



俺が貧血で倒れてから、凛太郎は以前にも増して過保護になった気がする。
俺をなるべく一人にしないようになったし、帰りも凛太郎が一緒に帰れないときは、雅明さんか薫さんが迎えに来る。
必ず迎えに来たことを確認して、凛太郎は自分の用事を済ませに向かった。
ここまで過保護になった理由を薫さんが迎えにきたときに聞いてみたんだけど。

「…知泉君が心配なんですよ。貧血で倒れたことをすごく悔やんでいましたから」

と、あやふやに話を終わらされてしまった。
一人は嫌いだから、誰かとずっと一緒にいれることは嬉しい。
でも、ここまで過保護になる理由が貧血で括られることは少しだけ納得できなかった。






紅葉祭も順調に進んでいる。
人通りの多いメイン広場では大きなステージが設置され、クイズなどの実行委員による出し物や各サークルの催しが行われた。

無事に午前の当番が終わり、凛太郎は役員の仕事に向かうために準備を始めている。
役員専用のジャンパーを着て、ポケットにしまっていた携帯を徐に取り出した。
なんだろうと思って凛太郎の行動を眺めていると、どうやら誰かに電話をするみたい。

「………もしもし?…ええ、大丈夫ですか?」

電話相手が出たらしく、凛太郎の目線が俺へと向けられる。
俺は小首を傾げ「何?」って小声で聞くと、そんな俺に凛太郎は微笑んで、そっと頭に手を伸ばしてきた。

「なら、待ってますね。…早くお願いしますよ、日向さん」

っえ!?
電話相手…雅明さんだったの?

俺は凛太郎の服を握り、なんで?という顔をした。
電話を切った凛太郎は俺の手を握り役員の控え室を出ると、俺の質問の答えを口にした。

「日向さん…今日は仕事が午前までだって言っていたから、知泉のお迎えを頼んだんだよ」

「…いつ?」

「…昨日。かおちゃんとこに行ったときに」

「……知らなかった」


前を歩いていた凛太郎が握っていた手を引き寄せ、俺を凛太郎の横へと促す。
人目を気にしながら、俺は凛太郎を見つめ返した。

「変な虫が来ないようにしないとね」
「…変な虫?」

意味深な言葉を凛太郎は呟く。
俺は凛太郎の言葉の意味が分からなくて、頭の上で『?』が飛び交って。
そんな俺を凛太郎は弧を描くように微笑んだだけだった…。




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