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友情と恋情の狭間で
安心する腕

「…知泉?」

掠れて見える人物に焦点を当て、俺は口を開いた。

「…雅…明さん?」
「ああ…」

すごく眉を下げて、雅明さんは俺の頬にそっと手を添えた。

「…俺、どうして雅明さんのベッドの上にいるの?」
「……貧血で倒れたんだ」

――貧血?
俺、いつ倒れたのかな?

「でも…雅明さん、仕事で遅くなるって」
「知泉が倒れたって聞いたからな…。途中で止めて帰ってきた」
「ごめんなさい」
「なんで謝る?知泉と仕事なら、知泉のほうが大事に決まってる」

頬に添えられていた手が、そっと俺の頭を優しく撫でる。
大きくて、温かい雅明さんの手―――…。

―――…あぁ、安心する。

俺は嬉しくて布団の中から手を出し、撫でられていないほうの手を握り締めた。

「…ありがと、ね」
「当たり前だろう」

あまり見ることがない雅明さんの笑顔。
俺も嬉しくなり微笑み返した。

「今日はゆっくりすればいい。明日の朝、大学まで送ってあげる」

立ち上がろうとする雅明さんの腕を掴み、俺は首を左右に振った。
“なんだ?”という顔をしながら、さっきまでいたところに座りなおしてくれた。

「…まだ行かないで」

一人にされることが怖い―――…。

雅明さんの匂いのする部屋にいるからかな?
それとも…雅明さんの手がすごく温かいから?

身体の奥に火がついたように火照りだす。
貧血で倒れたみたいだけど…このままでいるほうが辛いし、雅明さんに会えたんだもん。
一緒にいる時間を大切にしたい―――…。

「どうした?」

妖美な笑みを雅明さんは零す。
俺はドキッとしてしまい、顔中が紅く染まった。


「ククッ………。知泉、お前はまるで林檎だな」

椅子に座っていた雅明さんはいつの間にか俺の上に跨り、そっと俺の髪を口元に運んだかと思えば、鋭い瞳が俺の瞳を捕え、そっと唇が落とされた。

「美味しそうに熟している。真っ赤に熟れて俺に食べられたいのか?」

その一連の動作は手馴れたもので、キッチリ締められたネクタイを人差し指で解き、一瞬で首元にあったはずのネクタイは俺の両手首へと括られていた。

「えっ!?…ま、まさ…あきさん?」
「…今日はお前を縛ったまま犯すのもいいだろう?」

ゾクッとしたかと思うと、全身に電流が駆け巡る。
縛られて身動きがうまくとれないのもあるけど、雅明さんの艶やかな姿に息を呑んでしまう。

「…うん。……雅明さんに食べられたい。俺を食べて?」

縛られている両手を雅明さんの首にかけ、ゆっくりと顔を近づける。
唇が触れるか触れないかの距離で俺は囁き、雅明さんを誘う。
恥ずかしさより、早く雅明さんと一つになりたい気持ちのほうが先走り、無意識に下唇を舌で舐める。

「困った兎だな…。狼を惑わすイケナイ兎にはお仕置きが必要だ…」

軋むベッドの音と共に、俺は着ていた衣服を全て雅明さんによって脱がされる。
縛られていた両手首は、ベッドの上で再び括り直され身動きが取れなくなった。

「…雅明さん?」
「言っただろう?…お仕置きだと」

部屋の明かりはベッド横のスタンドライトだけ―――…。
仄かに照らされた雅明の顔は、獲物を目の前にした獣のようで…。
その姿に俺は…見惚れてしまった。


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あきゅろす。
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