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友情と恋情の狭間で
嵐の前の静けさ

「それで、昨日はかおちゃんの所でご飯食べたんだ」

二限目が終わり、俺と凛太郎は学食で昼食を取っていた。

「うん。それで、雅明さんが仕事終わってから迎えにきてくれて一緒に帰った」

きつねうどんを食べながら、俺は凛太郎に昨日あったことを話す。
凛太郎は俺の話すことを笑顔で聞いてくれた。

「よかったな。今日、日向さんは?」

「仕事で遅くなるって言ってた」

「なら、今日は俺の家に泊まるか?」

「うん!…でも、残らなくていいの?」

凛太郎は紅葉祭の準備で忙しいはず…。
俺は眉を下げ、凛太郎を見つめた。

「くく…。今日は書類提出だけだから早く帰れるんだよ」
「本当!?」

俺は嬉しくて、凛太郎の手を掴む。

「そんなに喜ぶことか?」と言いながらも、凛太郎は俺を愛おしむように微笑んだ。


昼食を終え、凛太郎と共に外へ出る。
今から次の講義がある学生もいれば、次の講義まで時間を持て余している学生も多い。
俺たちは今日の講義も終わったので、後は凛太郎の用事を済ませるだけだった。

「すぐに出してくるから」
「うん!いってらっしゃい」
俺は手を振りながら、凛太郎の背中を見送る。

いつものようにベンチで待っていようと振り返ろうとしたときだった。
勢いよく右肩を掴まれ、振り向いたと同時に俺の肩を掴んだ人物と目が合う。

「……相沢君?」
「………知泉」

息を切らし、肩で呼吸している。
鋭い眼差しで俺を見つめ、悲痛な面持ちで俺の名前をもう一度呼んだ。

――――あれ?そういえば……俺、名前教えたっけ?

「知泉…知泉だよな?」
「え…えっと、そうだけど……!?」

両肩を掴まれ、上下に揺さぶられる。

「どうして…あの日、何も言わずに消えたんだ!!!」

「え…?」

「俺がお前の気持ちを無視したからなのか!?―――答えろよ!!」


何が何だか分からず、俺はオロオロするばかりで…。
悲痛な顔で見つめてくる彼に俺はどうすればいいのか分からなかった――…。

「どうして…何も言わずに転校したんだよ。母さんに聞いても口籠るし…今どうしてるんだよ!家族と暮らしてるのか!?」

「…転校?………………か、ぞく?」



俺の中で何かが壊れる音がした―――…。

プツン――と糸が切れるような…儚い音…。

急に知らない映像が俺の中を支配する。
恐怖…憎悪…孤独…不安…さまざまな感情が俺の中で渦巻く。


思い出すな!!!

思い出しちゃいけない!!!


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」

意識が遠退く…。
嫌だ…。

愛して…。

俺を見て…。

俺を愛して…。



嫌だな…闇が俺を襲う…………。


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