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友情と恋情の狭間で
言いたいこと side那智

消えてゆく後姿を見送りながら、やはりどことなく昔の幼馴染の面影を重ねてしまっていた。
立ち尽くしていた俺の肩に手を置きながら、健吾が俺の見ていた先を眺める。

「知り合いなん?」

「ずっと前に助けたんだよ」

「へぇ〜那智が救世主様やったんか!…見てみたかったなぁ」


暢気に言う健吾の手を肩から退かし、俺は近づいてきた蒼に向き直る。
蒼もまた消えていった後姿を追うかのように、駐車場へ続く道を眺めている。

「どうかしたのか?」

「いえ…さっきの子は確か、秋山君とよくいる子ですよね?」

「…さぁ?そうなの」


俺は女の子との知り合いは多いほうだけど、男に関しては…ぼちぼちといったところだった。

「ええ…確か名前は………月宮君でしたか?」

…………えっ!?
…月宮。

「…蒼。フルネームは?」

「フルネームですか?……えっと確か、月宮知泉…だったと思いますよ」

「嘘だろ……」

「どうかしたんか?那智」


まさか…、いや、でも蒼が言うのなら間違いではないのだろう。
ずっと探していた幼馴染が、ちょっと前に助けた子で…。
さっきまで話していた子なのか?
…なら、俺の感じていたのは正しかった?
でも…違和感は残る。
知泉なら、俺の名前を聞いたら分かるはずだ。
ずっとそばにいたんだ…。
数年離れていただけで…名前を忘れるはずがない。
でも…あいつは、俺の名前を聞いても初めて会った風だった。
知られたくなかったから?
それとも…俺が知泉だと、確信していなかったから…?


俺の中で疑問が膨らむ。

今すぐにでも追いかけたい。

そんな、今まで思っていた想いも俺の中で溢れ出す。

固まったままだった俺に、怪訝そうな顔で健吾が覗き込んできた。

「その知泉って奴がどないしたん?」

「…探していた幼馴染だよ」

「うえっ!?……あの、数年前から探してる子」

目を大きく見開いている健吾。
お前がそんな態度取るなよ。
俺のほうが驚きでいっぱいなのに…。



探していた幼馴染。
何も言わず転校していったお前に、言いたいことがたくさんあるんだ。
文句もある……。
それでも…お前に一番言いたいのは……あの時お前を傷つけたことをどうしても謝りたいんだ。
そして…言えなかった言葉も―――――…。


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あきゅろす。
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