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友情と恋情の狭間で
再会

薫さんが来るまでベンチに座り待ち続けていると、話し声が聴こえてきた。

「だから…謝ってるやんか〜」
「知らないよ。健吾のお節介で引き起こしたことだろ?」

大学内にある広場から聞こえてきていた。
声の主たちは、だんだん近づいてきている。

「なぁ〜蒼もなんか言ったってぇや」

「…健吾が見栄を張って言ったんでしょう?一人でどうにかしなさい…と言いたいところですが」

「殺生やで〜」

「まぁ…一応反省はしているみたいなので、合コンぐらい付き合ってあげたらどうですか那智?」

「…俺だけかよ?蒼も付き合えよな」

あまり関心のなかった俺は一度だけ広場から出てきた三人に目をやると、すぐに下を向き携帯を眺めた。

「俺は遠慮しておきますよ。誘われているのは那智だけでしょう?」

「いや、蒼も来てくれたほうが女子率上がるさかい、来てくれん」



「…………」



「………蒼さん、その笑み…めっちゃ怖いで」

携帯を気にしながらも、なぜか三人の会話に耳を向けてしまう。
時間を持て余しているせいだろうけど…。
“那智”という名前にどこか引っかかりを感じてしまう。

そして携帯からまた三人のほうへと目線をなんとなく向けてみる。
すると、なぜかその中の一人と偶然にも目が合ってしまった。

………目が合っちゃった。
どうしよう…。

俺は蛇に睨まれた蛙のように、目が合ったまま動けずにいた。
ただ目線を逸らせばいいだけなのに…。
なぜかそのときの俺はそんな簡単なことが出来なかった。

すると、その視線を交わしていた人物が小走りに俺に近づいてくる。

えぇぇ、なんで近づいてくるの?
何かしたっけ、俺!?

脳内でパニック状態に陥ってしまった俺を他所に、その人物は笑顔で話しかけてきた。

「久しぶり?」
「?????」

俺の頭上で?のマークが飛び交っている。
知り合いだったかな?と本気で悩んでしまい、無言のまま見つめてしまう。

話しかけた本人も俺の様子に気づいたのか、そっと優しく微笑んできた。

「ほら、ずっと前に絡まれてたときに…………」
「………………あぁぁぁぁ!」

絡まれることは多々あったので、さすがに思い出すのに時間がかかってしまった。
いつもは凛太郎が助けてくれるので、他の誰かに助けられたことなど忘れてしまっていた。

「あの時、助けてくれた………えっと」
「那智、相沢那智な」
「そう、相沢君だ」

その笑顔につられて俺も微笑む。
いつも人見知りする俺が、なぜか相沢君にだけは恐怖を感じなかった。

…助けてくれたから?

俺は自分の中でその理由を考えてしまう。


「今日は一人?この前の友達は?」

「紅葉祭の実行委員だから、いない…」

「そうなんだ」

やっぱりこの声を聞いていると、安心してしまう。
二回しか会ったことないのに…。

すると俺の掌の中で携帯のバイブが振動した。
画面を確認すると薫さんからの着信。
俺は立ち上がり、相沢君と向き合った。

「ごめんね、知り合いが迎えにきたから」

「そっか…じゃ、またな」

「うん…それじゃ、またね。相沢君」

俺は手を振りながら、駆け足で駐車場へと向かった。


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