160 ────…なんだろう。 遠くで笛のような高い音がゆったりとした速さで奏でられている。 そして鈴のようなシャン、とした音と、何か仰いで風を起こしている音が頭の中で響く。 「───…っ」 苦しくなり息を吸う。 血液が体内で流れていく。 目を開眼させる。 何回か瞬きをする。 一つ一つの動作が重たく感じる。 これが生きてるってことなのかな。 …それにしてもここはどこだろう。 起き上がり周りを見てみる。 俺の周りに描かれている円には、氷の壁が造られてあった。 そのさらに周りにある円には炎の壁がまとっており、上を向けば夜空のように暗い天井がある。 その天井にはいくつもの光が飛び散って雷を起こしていた。 神秘的な部屋だったが、氷の壁があるせいか体が震える。 「…どうしようか」 悩んでポケットに手を入れた途端何かが入っているので、取り出してみると剣が出る小型のカプセルが出てきた。 「これで…」 カプセルを潰すように、親指と人差し指で押すと、煙を出しながら1つの剣が現れる。 長剣を掴んで、居合いの構えをし集中する。 氷の壁は恐らく漸先輩が作ったもの。厚く堅いので相当の力がなければ割ることは出来ない。 それくらい頑丈な氷の壁だとわかった。 そして高良の出した炎の壁。 斬っても斬っても燃え盛る炎は風を起こして斬ったほうが効率がいい。 かなりの斬撃を与えなければこの2つの壁は突破できない。 集中力を高くし、柄に力を入れる。 目を瞑り、己の最大の力をためる。 (今だ) 足を一歩踏み出して鞘から力一杯抜いた── Back Next [戻る] |