[携帯モード] [URL送信]
144
部屋にいると落ちつかないので、部屋を出てみる。

「千都…」



部屋の側には冷が座り込んでいた。


「冷?どうした?」


具合が悪いのかと思い、側に駆け寄る。


「千都の側から離れるなって言われてる」


俺が部屋から出ると思ったのだろうか。



「…それなら部屋入るか?」


「えっ?あ…だ、大丈夫!」


両手を前に出して断固否定を見せる冷。

任務だからなのか、その場所から離れない。



「そうか…じゃあ少し外の風にあたりたいんだが、一緒に来てくれないか?」



側から離れるなと言われていたから、俺が行くなら冷も行くだろう。


「…うん」


しばらく沈黙する冷だったが、首を縦に動かした。


エレベーターを降りて寮の玄関へと向かおうとする。


「千都さぁんっ…と、シュイレン?」



管理窓口から楓の顔が見えた。

「ええーっその関係何ですか?!シュイレンずるいですぅー」


頬を膨らませながら冷を見ている楓。


「なっ…わ、私は任務ですっ」

普段無表情な冷が怒ったように見せる。そんな姿が人間らしく見えた。


「ぶぅずるいずるいずるいぃー」

「い、行こう!千都!」



駄々をこねている楓を置いて、冷は俺の腕を引っ張り寮を出ていった。





「どこ、行くの?」



落ち着きを取り戻したのか、冷がいつも通りの無表情で静かに言う。


「…学校って開いているかな」

戦いが始まる前にどうしても見たくなった。


「今はきっと臨時で開いてると思うよ」


「じゃあ行こう」



そう言って、噴水広場の通りを左に曲がって白く大きな学校へと向かった。



冷の言っていた通り、玄関の扉は普通に開く。

靴を履き替えて、冷と一緒に目的の場所へと向かう。



「着いた…」



頑丈そうな鉄の扉を開き、見えてきたのは一面明るくなり始めている空とグラウンド、そしてここの学園を一望できる場所。


──そう、屋上だ。



「いつになくきれいだな」


普段とは違う時間で見ると、景色も違うように見える。


「本当、きれい…」


フェンスに寄りかかりながら見る俺と冷。


時間はゆっくりと流れていくが、そろそろ始まるらしい。


生徒が続々と学校や寮から出てきている。


「あなたにこれ渡しておく」


そう言って、冷からもらったものを受け取り、見てみると小さくきれいな水色の結晶のペンダント。


「千都を守る」

「ああ、俺もみんなを守るから…」



これ以上苦しめたくないんだ。

ペンダントを付けて、光で輝く結晶を強く握りしめた。







Back Next
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!