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「こんばんは、姫さん」

わたしに気付いたらしい彼は、そう言ってから にこりと微笑み、凭れ掛かっていた壁から背を離すと「遅かったですね」と付け足した。


「うん。ちょっと話してて、」
「…先程の方とですか?」
「、え」


今も後ろで立っているであろう人に対して"先程の方"なんて可笑しいなと思いながら後ろを振り返れば、そこに有希さんの姿は無かった。

先に帰っちゃったのかな。せめてさよならとか、また今度とか、言っておきたかったな。なんて思いながら彼に向き直る。


「ね、一樹くん」
「、なんでしょう」

彼は少し驚いたみたいな顔をして、それからすぐにいつもの微笑を浮かべる。わたしは特に彼の様子を気にすること無く 先程から気になっていたことを聞いてみた。


「何かあったの?わざわざ外で待ってるなんて珍しいよね」
「いえ、ただ…貴女の帰りが遅いようでしたので」
「…そっか」

一樹くんの言葉に適当な相槌をうってから、彼と並んで部屋へ向かう。(本当にそれだけなのかななんて思いながら)


「…そういえば、」
「?」
「先程、あの方がいらっしゃいましたよ」

その言葉を聞いた瞬間、エレベーターのボタンに手を掛けていたわたしの動きが止まった。





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