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殆ど何も無いと言っても過言ではない程の質素な部屋に一人で座らされているからか、妙にそわそわしてしまう。

長門さん、こんな何も無い部屋でどうやって過ごしてるんだろう。…まあ、彼女だったら 何もせずただ座ってる、とか言われても頷けてしまうけれど。



暫くしてから無言で戻って来た長門さんは、急須と二つの湯飲みを乗せた小さなお盆を机に置いて、わたしの正面に座ってから湯飲みへとお茶を注いだ。こぽこぽという音をたてながら注がれた湯飲みからはほんのりと湯気が起っていて、部屋に来てから直ぐに居なくなってしまったのはこの為だったのかと納得。

「飲んで」
「あ、どうも‥」


目の前に差し出された湯飲みを両手で持つと じわじわと温かさが伝わってきて、入れたてなんだなと改めて実感する。自分が猫舌だということも考慮しながら少しずつ飲んでいき 三分の一程度飲んだところで湯飲みを置いた。

顔を上げると、此方を見ていたらしい長門さんの視線とわたしの視線がばちっと重なり、何だか急に恥ずかしくなる。




「…あ、あのっ。長門さん」

少しだけ恥ずかしくなってしまった事に照れて一瞬だけ目を伏せてから またすぐに彼女へと視線をやる。彼女は無言のまま、わたしの言葉を待つ様にこちらを真っ直ぐと見た。

「えっと、わたしのこと…知ってるんですよね?」

彼女はこくりと微かに頷いて、再びわたしへと視線を向ける。

「北高にいるのは、やっぱり涼宮さんの監視の為?」
「そう」
「じゃあ、わたしに声を掛けたのはどうしてですか?」
「統合思念体と貴方達は相互協力の関係にある。貴女とコンタクトをとっておくのが最善の行動」
「…そう、でしたね。」


彼女がさらりと口にした、わたし達と情報統合思念体の方々の関係。確かにそうだった。互いに害は無いと判断して、相互協力という結論に至ったんだ。



「それじゃあ、これから宜しくお願いしますね、長門さん」
「…………」
「、どうかしました?」

これからは色々と関わる様になるだろうと思って挨拶すると、彼女は考えるような表情になった。何かマズいことでも言ってしまったのかと思い尋ねれば、


「敬語は必要無い。それから、」
再び黙って微かに目を伏せてから すぐに視線をこちらへ向ける。

「呼ぶなら下の名前で」


小さく。本当に小さくだけれど、微笑んだ様に見えたのは わたしの単なる見間違い…それとも気のせいだろうか。

「えーっと…じゃあ、有希さん?」
それならばと彼女の下の名前を口にすれば、彼女はこくりと頷く。
改めて、宜しくお願いしますと微笑めば 彼女は短く「此方こそ」と答えてくれた。








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