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その笑顔は反則だから(宍戸亮)











あー、だりぃ。

昼下がりの職員室前。

……ちょっと格好良く言ってみたけど、たいして変わらなかったんで、取り敢えず職員室前。

少し遅めの昼食を摂るために、俺は購買でパンを買った。

今はその帰り。

もしかしてアイツに会えるんじゃないかなって期待なんかして。


『おーい、しっしどー!!』


ほら、噂をすれば。

コイツは生徒会役員だから、よく職員室にいるんだ。

ちょっとだけ面倒臭そうに、怠そうに振り返ろう。

そう決めて、俺はゆっくり振り返った。


「ぶっ……、いきなり何だよ!?」


前方から、よたよたと大量のプリントが歩いてきた。


『お、重いよー』

「いや、わかるけど……」


俺が手伝ってやろうと思い手を貸そうとすると、友伽里はヒステリックに叫んだ。


『だめっ!!』

「はぁ!?」


人の好意を踏み躙りやがった。


「何でだよ」


少しだけ傷付いたのでムスっとして俺は聞いた。

すると友伽里は、よくぞ聞いてくれた!と言い、積み上げられたプリントの横からぴょこっと顔を出した。


『実はね、かけてるの!』

「何を、誰と」


全く、話が通じねぇ。

仕方がないので隣を歩きながら話の先を促した。


『景ちゃんとフレンチ!』

「はぁ、フレンチ」

『えっとねー、私が教室までプリントを1人で運べたら勝ち!っていう感じ!悪くないでしょー』


にっこりと笑って歩く友伽里。

幸せそうにしやがって。

友伽里は跡部と仲が良い。

大体予想は付くが2人は両思いだ。それも随分昔から。

お互い気付かないほど近くに居るんだろうな。

まぁ、友伽里と幼なじみとして生まれてきたのは紛れもなく俺だった筈なんだけど。

そんな訳で俺は失恋。

初恋はうまくいかないものだ。


「で、お前が負けたら?」


俺が呆れたように聞くと、友伽里は立ち止まって顔を真っ赤にした。

まさか。


『し、宍戸は幼なじみだからっ、言うけど……』


まさか。


『私が負けたら、つ、付き合って、くれって……』


開いた口が塞がらないってのはこんな感じか?

俺は恥ずかしがる友伽里を冷めた目でみることしか出来なかった。


『な、なによ!どうせ遊ばれてるとか言うんでしょ!別に良いもんっ……あっ!』


バサバサッ


『ちょ、宍戸!?』

「はい、お前の負け。跡部の勝ち。理由、俺が手伝ってやったから」

『なっ、そ、そんなぁ!!』


顔を真っ赤にして目を潤ませている友伽里の頭をポンポンと叩いてやった。


「おら、泣くなよ。激ダサだぜ?跡部が待ってんだろ?」

『……うん。』

「行け」

『宍戸、大好き!!宍戸が幼なじみで良かった!』

「あー、はいはい」


生徒会室まで走っていった友伽里を、俺は見送った。

あの時の笑顔を、きっと俺は忘れない。


後日、2人が付き合いだしたのを聞いて後悔したのは秘密だぜ?







その笑顔は反則だから
(ほら、もう諦めるなんて出来なくなってしまった。)


2010/12/08


あきゅろす。
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