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先生、
先生、気付かせて。











『っく、うぇっ、』

「……大丈夫?」


只今ファミレスにて昼食をとっています。

先程まで映画館で話題の恋愛映画を先生と観てました。


『だ、だって、ヒロインがっ、ヒロインがっ、』

「うーん、病気だったとはねぇ。」


先生は半ば呆れたように私をみて笑っていた。


『悲しいです!あんなに愛し合っていたのに!』


私は、ガタンと机を叩き、一気にジュースを飲んだ。


「歩美ちゃんは純粋なんだね。」

『……え?』


少しだけ馬鹿にされたような気がしたので、先生を怒ってやろうと顔をあげると、先生は遠い目をしていた。


『先生……?』

「あ、いや。大丈夫。」


いつもは落ち着いている先生なのに、少しだけ焦ったような声だった。


チャラン


そんな先生の声と重なるように私の携帯が鳴った。


『あ、』

「どうしたんだい?」


携帯の画面を見ると、百合が真田先生の頬にキスをしている写メが添付されたメールが届いていた。


“ファイト”


そんな一言と共に。


『な、な、なっ!』

「やるねぇ……。」


私は真っ赤であろう自分の顔を手の甲で隠し、幸村先生に携帯を投げつけた。


『は、破廉恥!!』

「あははっ、俺に言われてもなぁ。」


クスクス笑っていた幸村先生は、ふと笑うのを止めて私を見た。


『……先生?』

「……そろそろ、帰ろうか。」

『まだお昼過ぎですよ?』


携帯を拾い上げてディスプレイを見ると、まだ2時過ぎだった。


「仕事が入っているんだよ。」

『あ、すみません!』


その言葉を聞いて、私は申し訳なくなり謝った。

私が不安げに顔を上げると、幸村先生は何時ものように目を細くして笑っていた。


「送るよ。」

『……っはい!!』


先生の車に乗って、街を出た。

帰りの車の中は先生の香りでいっぱいで、胸があったかくなった。

そして何気ない会話をして私達は沢山笑いあった。


「今日は楽しかったよ。」


別れの時間が来て何だか寂しかったが、私は笑顔で頷いた。


『私もです。』

「また、行こうか。」

『はいっ!じゃあ、また学校で!!』


先生との1日を胸に、私は先生に手を振って家に入った。

先生の車が遠ざかっていく音が聞こえる。


『……先生。』


きゅっと鞄を抱きしめ、私は顔を隠した。

とても楽しかったです、先生。

でも、私は気付いていなかった。

先生の気持ちに。

あの時、どんな気持ちで遊びに来てくれたのですか?

どうして断ってくれなかったのですか?

今になってわかる貴方の気持ち。

この時の私は嬉しくて、自分の事しか考えていなかった。

知っていますか?

あの時付いた携帯の傷。

傷に触れるたびに、私は涙が止まらないのです。















あきゅろす。
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