先生、
先生、もっと。
『え!じゃあ先生と真田先生は部活仲間だったんですね!』
私は幸村先生と授業をサボった。
暖かい風が包む高等部の中庭で。
「そう。真田の顔は今と変わらず大人みたいで、よく中学生にからかわれていたよ。」
『あははっ!そうなんですか?』
先生が楽しそうに話すから私も楽しくなる。
先生はテニス部で部長を任されていたらしい。
なんか似合うな、テニス。
『強かったんですか?』
もっと知りたい。
私が知らない先生を沢山。
先生は私の質問に軽く笑った。
「強かったんですか、か。……うん、強かった。」
『?』
先生の瞳が揺らいでいた。
いつもは真っすぐに何かを見据えている瞳が。
「俺たちの代でね、壊したんだ…。学校は王者なんて言われ続けていたし、俺なんか神の子とまで言われていた。」
『そうですか、…すみません。』
悪い事を聞いてしまった。
先生は、きっと答えたくなかった筈。
「……なーんて。」
『え?』
先生がゴロンと大の字になって寝転がった。
その姿はまるで子供。
「笑えるよね、本当。俺は3年、相手は1年のボウヤ。……強かったな、彼。」
目を閉じて先生は思い出に浸っていた。
何もしないで横になっていよう。
先生の横に大の字になると、先生は私の手を握った。
『……先生?』
「…少しだけ、ね。」
『…はい。』
震える先生の手が過去を全て語っているようだった。
「格好悪いな、俺。」
『そんなことないです。』
そんなことない。
だって貴方は私の愛する人。
「歩美さん…。」
先生がこちらを向いた。
『はい。』
私も先生を見た。
「日曜、楽しみだね。」
『っ///はい!』
風が気持ち良い。
先生、私、貴方が好きです。
→
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!