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飴玉注意報
期待しちゃうよ










ザァーッ








念願の雨




大量に吊るしたてるてる坊主のお陰なのか、それとも神様が同情してくれたのか、どちらにせよ、俺は嫌でも顔が綻ぶ








「雨が降って〜俺は〜君を迎えに〜い〜く〜よ〜♪」






自作の歌を歌いながら、ジャッカルが部活が休みだと知らせに来るのを待った






「ブンちゃん良かったのぅ」





仁王は、まるで自分の事のように喜んでくれた


いつも感情を表立って出さない仁王だったから


俺はそれが何だか妙に嬉しくて、また一際笑った







待つこと30分








「ジャッカルのやつ…おっせぇなぁ」





「そうじゃね…」





遅いジャッカルに半ば苛立つブン太と、ただただため息をつく仁王




立海の放課後は、部活動をしている生徒により騒がしい





しかし、今日は雨だということもあり、吹奏楽部の奏でる楽器の音しか耳に入ってこない




ふっ、と何か違う音、否、声が聞こえた






「ブンちゃん?」





ぴくりと動いたブン太を不思議に思ったのか、仁王がブン太を見る






「赤也」






「は?」






「赤也の声がした!」





ばっ、と立ち上がり
教室の窓からグラウンドを見る






「なに、やってんだよぃ…」




ブン太と仁王の視線の先はテニスコート





そこには、コートの周りを走るレギュラー陣がいた






それを見たブン太は絶句


ただテニスコートを見ているブン太の肩に仁王がポンッと手をおいた







「ブンちゃん、行くぜよ」






我に返り振り替えると、テニスの準備を整えて教室を出ようとする仁王


少し苦笑いしている






「い、嫌だ」





プイッとまた窓を見る






「はぁ、ブンちゃん。残念じゃけど…仕方なか」





駄々をこねるブン太に仁王が近付き、ブン太の荷物を持ち、手を引く







「行くぜよ」






「んでだよ…」






今日に限って。







みんなが頑張ってる中
俺は帰りたくてしょうがなかった





コートに近付くにつれて、赤也だけでなく、皆の声が聞こえてきた





「もう無理っスよ〜」






汗だくの赤也


相当走ったようだ






無言で突っ立ったままの俺を隠すように、仁王が前に立ち、遅れた旨を伝えた






遅れた俺達に真田は、いつもの鉄拳では無く、コートを30周、とだけ伝えた








「ブンちゃん早く走るぜよ」






「おう」






なんだか胸にぽっかりと穴が空いた気分だ





それはだんだんと苛立ちに変わっていった。


ドロドロしてて気持ちが悪い





そんな俺が、先程の仁王の気遣いになんか気付くわけが無く






「…やっぱ、俺帰る」





と、無意識に足を止めて、部室へ歩いていた







「な、ブン太!」






「丸井先輩!?」





仁王と赤也に呼び止められたが振り向かない




途中で幸村と真田の間を通ったが、何も言われなかった








「約束したんだよぃ」






次に会うのは雨の日





この前よりもかなり遅い時間だから、君が居る保証は無かったけど足は街角の信号機へと向かっていた





鞄の中にある小さな箱を持って




喜んでくれるかな?




部活での嫌だった事は忘れよう。
今は、君と時間を共有したい









パシャパシャと雨を避けながら歩く




あの信号機には小さな君が傘もささずに居た












「な、なにやってんだよぃ!」






バシャバシャッ





駆け寄って傘を彼女に傾けた


待ってくれて居るなんて考えて無かったから、自然と顔がにやける





期待、しちまう




もしかしたら君も、って






どきんどきん






ブン太は顔を赤らめて彼女の顔を覗き込んだ








「ごめんな、待たせ…て、え?」






精一杯の強がりで
君に聞こう


俺のこと待ってたの?







でも







「お、おいっ!」




『ブ、ブン太くん?』




「顔、真っ青だぜぃ!?」




『ブ、ン太くん、甘いモノ、持って…無い、か…なぁ?』






ブン太が、その日


その質問を彼女に投げ掛ける事は無かった







ブン太の鞄が雨に濡れる










あきゅろす。
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