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飴玉注意報
心の扉









「この数ヶ月、俺、お前に会いに来んなって言われて、すげぇへこんだし、正直泣いた。」

『ごめんなさい…、』


俯く明菜を見て、俺は目頭が熱くなったが我慢した。

そんな俺達を隣で柳生が黙って見ていた。


「違う、もういいんだ。明菜を幸せにする覚悟が無かったのは本当だったし。」


ゆっくりと明菜に近付き、明菜が座るベッドに手をついた。


「明菜、俺、いっぱい勉強した。」


小刻みに震える小さな体。


「守るから、ずっと。」


俺がなにがなんでも守ってやる。


「不安があるなら言ってくれよ?」


俺は鞄から医学書を一冊ずつ取り出し、明菜の隣に並べた。


「小便したいって時は、俺が担いで連れていってやる。」


ふるふると明菜は首を弱々しく振った。

そして、きゅっと白い布団を握った。


「倒れそうになったら俺が支えてやる。」


俺は明菜を見つめた。

ちらりと横を見ると、柳生も肩を震わせて立っていたが、部屋から出ていった。


「だから、…淋しい時は傍にいるから…、」


ヤバイ、泣きそうだ。


「俺にお前をくれよ…、」

半ば縋るように俺は明菜の腕を掴んだ。

明菜の細い腕を握り、肩を抱く。


『ブ、ブン太、くんっ!』


ボロボロと涙を溢れさせる明菜を見た俺の目は限界だった。

ぎゅっと目を瞑り、明菜の肩に顔を埋めた。


『私、』


明菜が声を発した。

一瞬どきりとしたが、俺はゆっくりと明菜から離れた。

できるだけ落ち着いているように見えるように。


「何?」


柔らかく明菜に微笑んだ。


『……私で、いいの?』

「え、…?」


予想外の言葉に俺は言葉を無くした。


『っ、体弱いんだよ?迷惑かけるんだよ?』


そんな俺を見て、明菜は不安になったのか俺の肩を揺さ振りながら問い詰めた。

今にも泣きそうな顔をして。


「俺は、お前がいいんだよ。」

『っ…、』


涙を目に溜めた明菜は、俺を真っ直ぐと見た。

ああ、久しぶりかもしれない。

君が俺を見つめ返してくれたのは。


「だから、俺と居てくれ。」


俺は、ぎゅっと明菜の手を握りしめ笑った。


『私、ケーキバイキング行けないよ?』

「甘いもんなんか、お前が傍にいてくれるならいらねぇ。」

『っ、…走り回ったり、遊んだり、出来ないよ?』

「お前が傍にいてくれるなら……っ、」

『きゃっ、』


俺はぐっと明菜を抱き寄せて頭をがしがしと撫で付けた。


「ずーっと、一緒だ!」


俺達の未来は、絶対ぇ明るい。

そうだろぃ?

明菜……。

病室の窓に映った君の顔が、素直に微笑んでいた。











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