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飴玉注意報
努力の証









「っと、コレ、かな?」


立海大の図書館。

ついこの前までは、何でこんなに無駄に本ばっかりあるんだ、とか思っていたが、今となっては有難い。

俺は毎朝早く学校に来ては図書館へ行き、それこそ昼休みも部活帰りも通った。

もちろん、休み時間は図書館で借りた医学書等を読んだ。

周りからは、ブン太が壊れただの何だの言われたが知ったことか。

とにかく俺は必死だった。

早く明菜に会えるようにって、頑張った。

理解しにくい単語は柳に聞きに行ったし、学期末試験そっちのけで医学書を開いていた。

部活中は部活に集中したけどな。

真田、怖いし。

だけど、真田も不器用ながらに俺を応援してくれた。


「おっ、トイレ近くなんのか…。」


沢山の人に支えられながら、俺は色んな知識を吸収していった。


「つーことは、俺がトイレまで担げば良くね?」


病気で生活に支障がでる場合は、俺なりの解決策を考えたりもした。

幸い、明菜の病気は、そこまで支障が出る事は無い。


「……、」


ちらりと自分の携帯を見る。

時々、柳生から明菜の様子は聞いていた。

最近は元気が無いらしく、体重も落ちてきているそうだ。

勉強している時以外は、明菜の事を常に考えている気がする。

元気が無いっていうなら、俺が元気をつけに行けば良い。

でも、まだだめだ。


「ふぅ、こんだけじゃ足りねぇよな。」


多分俺はこの数ヶ月で、図書館にある医学書は読み尽くしたと思う。

まぁ、明菜の病気に関わるところだけを読み漁っただけだが。


「本屋、行くか。」


学校帰りに必ず立ち寄るようになった、でっかい本屋。

ここでも俺は関連書籍を数冊購入しては、ずっと読んでいた。


「やっぱ、大変だよなー。」


知れば知るほど深くなる病気の恐ろしさ。

俺は、無言でバカでかい医学書をレジへ持っていき、無言で購入した。


「うしっ、勉強すっか。」


そんな事を繰り返す日々が、また数ヶ月続いた。











**********












「は?」


ドサドサッ

俺は携帯を耳に当てたまま硬直して、手に持っていた医学書を落としてしまった。

隣で漫画を読んでいた仁王が、首をかしげて俺を見た。

どくんどくん

治まれ俺の心臓!


「ちょ、柳生、マジかよぃ?」

((えぇ、ですから、今から病院へ来ませんか?))


電話越しの柳生の声は微かに笑いを含んでいた。


「な、待っ、どうしよう!」


俺は携帯を握り締め、仁王を見た。


「どうしたんじゃ、」

「今から柳生が病院に来いって!」


ガクガクと仁王の肩を揺さ振ると、仁王は苦しそうに笑った。


「ふっ、行ってくれば良か。」

「え……、」


俺が一番欲しかった言葉。

今日まで、必死で必死で、

本当に頑張ったんだ。

いいのか?

もう、会いに行っても。

勉強不足なんじゃないのか?

俺が立ちすくんでいると、仁王が床に落ちた医学書を拾って、俺に手渡した。


「ほれ、お前さんは十分頑張ったぜよ。気持ち、伝えて来んしゃい。」

「〜っ!さ、さんきゅー!」


俺は仁王から渡された医学書やノートを無造作に鞄に詰め込み、図書館を急いで出た。

今なら、浪花のスピードスターとか言う奴にも勝てる気がする。


「っ、早く…会いてぇ!」


俺は呼吸も忘れるくらいに、無我夢中で病院まで走った。












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