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飴玉注意報
理解したいよ







「明菜!」


顔を真っ青にして明菜に駆け寄る柳生と仁王。

んだよ、何なんだよっ!


「明菜!大丈夫ですかっ!?」


ゆさゆさと明菜の身体を揺らして、柳生は意識があるか確認する。

柳生の手が震えているのが見えた。


「ブン!救急車じゃ!」

「え、あ、おう。」


仁王の言葉で我に返り、携帯をポケットから探り出した。

思考が追い付かない。

ただ俺は、その場の光景を他人事の様に棒立ちで見ているしかなかった。

携帯を握る手が震える。


「明菜!」


柳生の悲痛な声を聞くたびに心臓が痛くなる。

罪悪感。

取り返しのつかない状況。

俺の頭ん中では、既に最悪のシチュエーションが待っていた。


「明菜!しっかりして下さい!」


柳生が叫んだ刹那、微かに明菜が口を開いた。


『ひ、ろ?』

「明菜!」


俺は咄嗟に手を止め、安堵した。

よかった。

明菜に何もなくて

俺は安心して携帯をもう一度ポケットへと入れた。


『ひ、ろ…、きつ、い。』

「っ!お二人とも!何か甘いものをお持ちですか!?」


途切れ途切れに聞こえる明菜の小さな声。

柳生はしっかりと耳を傾け、明菜の手を握っていた。

また、だ。

少しだけ芽生える嫉妬心。

嫌だ、見たくない。


「つーか、甘い物って何だよ!柳生、てめぇふざけてんのか!?」


意味わかんねぇよ。

なにが甘い物だ!

んなもん持ってるわけねぇだろぃ!?


「ブン、あるじゃろ。」

「あぁ?」


俺を宥めるように仁王が優しく静かに呟いた。

俺は頭に血が上っていて、仁王を睨み付けた。


「鞄。入っとるじゃろ?チョコレート。」

「あ……、」


俺は急いで鞄を開けて、綺麗にラッピングされた箱を開けた。


「それ、いただいても構いませんか?」

「あ、ああ。」


チョコレートで何をするって言うんだ。

俺は柳生を怪訝な目で見ていたに違いない。

隣の仁王は柳生に近づいて何か話している。


「…えぇ、意識がある時は甘い物で。」

「ほう、一応病院へ運ぶか。」

「そうですね。」


俺は、だらしなく鞄を開けっ放しにして三人を見ていた。


「は?」


笑うしかなかった。

この時、真実を知らなかったのは俺だけで、何をしたら良いのかさえわからなかった。


「もう、疲れた。」


俺はもう魂が抜けるんじゃねぇのかって程、苦しんだ。

もう、傷付くのは嫌だ。


この日、柳生に話したい事あると、明菜が運ばれた病院まで行った。


夜の病院は静かで寂しかった。


君への最初のプレゼントになるはずだった、チョコレート。

こんな形で渡す事になるなんて思ってもいなかった。

君が笑って『おいしい。』と言ってくれることを期待していたのに、君は俺の所為で笑えなかった。


涙も出ない。

俺は間違えたんだ。

ガキみたいに駄々こねて、感情任せになって…。


暗く静かな病院で、明菜の病室からの明かりが俺たちの影を写し出していた。












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